高齢動物の口腔内のトラブルで1番多いのは歯周病です。歯周病は歯を支える歯槽骨を溶かして進行していきます。上顎犬歯などに歯周病が起こった場合、鼻腔との間の厚さが1~2mmしかない歯槽骨が溶かされ、口腔と鼻腔と繋がってしまうことがあります。この状態を口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)といいます。近年、とても増えています。
口腔鼻腔瘻になってしまうと、歯根の細菌が鼻腔に入り、慢性的に鼻炎をおこし、くしゃみや鼻水が常に出るようになってしまいます。
口腔鼻腔瘻の治療は罹患歯の抜歯をするしかなく、さらに抜歯をした場所をきれいにしたあと、歯肉粘膜フラップを形成して蓋をします。この処置を行わないと、傷がふさがらずに口腔内と鼻腔内が連絡したままで治癒してしまい、食べたものが入ってしまったり、違和感が残るなどのトラブルの原因となります。
口腔鼻腔瘻の予防には歯周病にしないことが大切です。毎日の丁寧な歯磨きを行いなるべく歯石が付着しないようにします。それでもいつかは歯石が付いてしまいます。その場合はスケーリングを行います。歯周ポケットや歯の裏側の歯石をきちんと取り除くためには、全身麻酔下の処置が必要です。高齢動物の全身麻酔には抵抗がある方も多いでしょうが、口腔鼻腔瘻になってしまう前に行ってあげてください。
重度の歯石と口腔鼻腔瘻