犬の皮膚の腫瘍はよく見られます。アジアの国の犬の皮膚の腫瘍の疫学を調査した統計は、今までほとんどありませんでしたが、今回、日本の犬の皮膚腫瘍の有病率、一般的な腫瘍タイプの発生と、犬種、年齢、性別、解剖学的位置の関係を調査した論文が東京大学の先生方から発表されました。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31257236
論文の要点は
・2008年~2017までの皮膚腫瘍の1435症例を調査した
・813頭(56.66%)は悪性腫瘍、622頭(43.34%)は良性腫瘍だった
・軟部組織肉腫(18.40%)、肥満細胞腫(16.24%)、脂肪腫(9.69%)、毛包腫(9.34%)、良性皮脂腺腫(8.50%)は他の腫瘍タイプより多かった
・腫瘍があった場所は、頭部(13.87%)、後肢(10.52%)、前肢(8.01%)、胸部(5.78%)、頸部(5.57%)だった
・皮膚腫瘍の発生リスクは、11歳以上の犬で有意に増加した
・雑種犬(14.63%)、ミニチュアダックスフンド(9.90%)、ラブラドールレトリバー(8.01%)が腫瘍が多く見られた3犬種だった
・ボクサー、バーニーズマウンテンドッグ、ゴールデンレトリバーは雑種犬と比べ、皮膚腫瘍発生のリスクが増大していた
などでした。
犬の皮膚腫瘤の半分以上が悪性腫瘍という結果です。悪性腫瘍のうち、軟部組織肉腫、肥満細胞腫が多いのは、自分の肌感とも一致していますが、こんなに悪性腫瘍の割合が多いのには驚きました(大学病院は状況も違うと思いますが)。皮膚に腫瘍を見つけたら、まずはFNA検査(細い注射針を腫瘍に刺して細胞を採り、染色して顕微鏡で観察する検査)がおすすめです。100%の精度はありませんが、今後の方針をたてられます。
犬の皮膚腫瘤