犬の出産の流れについてご説明します。犬の妊娠期間は56~72日と幅がありますが、平均して63日です。交配した日がわかれば、出産予定日を予測できます。交配後30日くらいで超音波検査で妊娠の確認をして、出産予定日の1週間くらい前にはレントゲン検査で頭数と骨盤の大きさを確認し難産になりそうかを判断します。
出産の準備としては、静かな落ち着ける場所、産箱、体温計、助産が必要になったときのため、清潔なタオル、ハサミ、ドライヤー、バケツ、消毒薬、絹糸、体温ぐらいのお湯なども必要です。また、予定日の1週間くらい前になったら、母犬のお腹の毛を刈って赤ちゃんが母乳を飲みやすくしておきます。
通常、出産の1~2日前から落ち着きがなくなります。寝所を探し、注意深い行動をとるようになり、食欲も減少します。分娩直前12~24時間になると巣づくり行動をします。妊娠末期に起こるホルモンの濃度の変化によって、分娩8~24時間前に体温が急激に下がります。定期的に計っていると、分娩約1週間前くらいから直腸温の変動が始まり、個体差はありますが、小型犬で35℃、中型犬で36℃くらいまで下がります。大型犬では37℃以下になることはまれです。
出産の流れ
第1ステージ:身体が出産の準備をするステージで、体温が低下してから6~12時間続きます。舌を出してハアハア息をしたり、寝床を作り直したりします。体温を上げるための震えが見られる場合もあります。まれに吐くこともあります。
第2ステージ:直腸温が上昇し平熱、あるいはやや高温を保ちます。子宮が収縮するため、お腹に力が入ります。陣痛が始まると通常ならば一次破水が起こります。胎仔は外側に尿膜(黒っぽい膜)、内側に羊膜(白っぽい膜)と二重の胎膜に包まれていて、それぞれに胎水が存在します。一時破水は尿膜が破れることによって起こります。これにより産道は潤滑になり胎仔の娩出が助けられます。二次破水は羊膜が破けることで起きますが、そのまま娩出されることもあります。通常は娩出された時点で母犬が胎膜を破り、臍帯を噛み切って胎仔を舐めてきれいにします。ここで注意するべき点は、この作業を母犬がきちんとしてくれるかどうかです。分娩したまま何もしない場合は、ヒトの介助が必要です(助産、下記参照)。ただし、これはあくまでもやむをえない場合に限り、なるべく母犬に任せるようにします。全て娩出し終わるまでに、平均1頭あたり20~40分を要します。2時間以上間隔があくような時には病院にご連絡ください。
第3ステージ:それぞれの赤ちゃんの娩出後15分以内に胎盤が出てきます。必ず胎盤を確認します。胎盤がでてくる前に次の赤ちゃんの第二ステージが始まることもあります。とても吐きやすい時期でもあるため、胎盤はなるべく食べさせないようにしてください。誤嚥性肺炎を起こしてしまうことがあります。
最初の赤ちゃんに一番時間がかかり、その後は5~120分くらいで次の分娩が始まります。
赤ちゃんの数だけ第2ステージと第3ステージを繰り返し、6時間程度ですべての赤ちゃんが生まれますが、長いと12時間以上かかることもあります。
助産:母犬が赤ちゃんの面倒を見ない場合は、ヒトの介助が必要です。赤ちゃんが生まれたら羊膜を破り臍帯を切ります。臍帯の白線を確認し、白線の赤ちゃん側に絹糸などで結紮をして、ハサミで胎盤側を切ります。次にタオルで赤ちゃんを自分と向かい合うように包み、軽く振って羊水を出します。その後産湯を使い、タオルやドライヤーで乾かしたら初乳を与えます。
また、猫の場合は出産前の健診は犬と同様に行いますが、出産時にヒトが介入する必要は基本的にはありません。臍帯切りや産湯などをしてしまうと、お母さん猫の赤ちゃんへの興味が無くなってしまうことがあります。落ち着ける場所や産箱を用意して、お母さん猫に任せるのが基本方針ですが、万が一の時ために、助産の準備は犬と同じようにしておきます。