前回の脾臓の病気の中でも一番多く、恐ろしいのが血管肉腫です。犬の脾臓の結節(しこり)には2/3ルールというものがあって、脾臓に何らかのしこりがある場合、その2/3は腫瘍性病変で、さらにその2/3は悪性腫瘍である。そしてその2/3が血管肉腫であるといわれています。血管肉腫は血管内皮由来の悪性度の高い腫瘍で、脾臓の他にも心臓(右心耳)、肝臓、皮膚など、いろいろなところに発生します。中でも脾臓での発生率が最も高いです。犬では6-17歳に起こり、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、ジャーマンシェパードなどの大型犬によくみられ、猫では稀です。単発の場合もありますが、多発の場合もあります。血行性に転移・播種しますがリンパ節転移は稀です。破裂したもの、多発傾向のものは転移しやすいといわれています。
血管肉腫は被膜に包まれておらず非常に脆いため、破裂して出血したり、隣接する器官と癒着することがしばしばあります。内臓の血管肉腫(主に脾臓や肝臓等)によく見られる症状は腫瘍が破裂したことによる、急性の衰弱ないし虚脱(ショック状態)です。血管肉腫では貧血、血小板減少および凝固能の異常がみられることが多く、程度は症例により様々ですが、約50%は播種性血管内凝固(DIC)になるといわれています。また、腹腔内で破裂した状態でみつかると、ショックの改善→DICからの脱出→手術の成功とハードルの高い治療が必要です。治療が上手くいっても予後は2ヶ月くらいといわれています(ドキソルビシンという抗癌剤やホメオパシーなどの代替医療を用い、数年寿命が延びた例もあります)。まずは腫瘍が破裂する前に発見して手術で摘出したいところですが、現在のところ、内臓の血管肉腫を早期発見するのはなかなか困難です。好発犬種では定期的な超音波検査を行うことが推奨されます。
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血管肉腫の脾臓