No.178 脾臓の病気

脾臓は胃の下にある比較的大きな臓器で、主な働きとして、古くなった赤血球を壊す、抗体を作る、血液を貯留させておくがあります。いずれも重要な役割ですが、他の臓器でも代償可能なため摘出しても大きな問題は生じません。

犬やフェレット (稀に猫も) では、脾臓が腫れる脾腫や、脾臓にしこりができる結節性病変がよくみられます。基本的には、脾臓が大きくなり過ぎて他の臓器を圧迫したり、結節性病変が破裂したりしない限りほとんどの場合は無症状です。

脾臓が腫れている場合(脾腫)の主な原因(赤字のものは悪性腫瘍です)
・うっ血:フェレットで多い
・髄外造血:フェレットで多い、犬にもみられる
血球貪食性組織球肉腫:大型犬で稀にみられ、非常に悪性度が高い
肥満細胞腫:猫で多い、犬やフェレットでもみられる
低分化型リンパ腫:猫、フェレットで比較的多く発生し、犬にもみられる

脾臓に結節性病変(しこり)がある場合の主な原因
・血腫:事故などによる脾臓の内出血が固まった場合などにみられる
・結節性過形成:フェレットで多い
血管肉腫:大型犬で多くみられ、非常に悪性度が高い、脾臓の悪性腫瘍で一番多くみられる
間質肉腫:稀
組織球肉腫:大型犬で稀にみられ、非常に悪性度が高い
高分化型リンパ腫:猫、フェレットで比較的多く発生し、犬にもみられる
低分化型リンパ腫:猫、フェレットで比較的多く発生し、犬にもみられる

診断はレントゲン検査、超音波検査で脾腫や結節性病変を見つけ、状況によって針生検(バイオプシー)を行います(血管肉腫などの悪性腫瘍が強く疑われる場合、大出血が起こる可能性がある場合は行いません)。治療は経過観察を行う場合もありますが、とくに犬で血管肉腫をはじめとする悪性腫瘍を疑う場合は早期の脾臓の摘出が必要です。また稀ですが、ボルゾイやグレートデンのような大型で胸郭の深い犬では脾臓の捻転がみられる場合があります。この場合も脾臓を摘出することが多いです。また、脾臓そのものの病気ではありませんが、難治性の免疫介在性溶血性貧血のときに脾臓を摘出すると予後が良くなる場合があります。いずれにしても、酷い状態になるまで無症状な場合が多いので、10歳以上の犬や5歳以上のフェレットでは、定期的な超音波検査が推奨されます。