食品中のタンパク質は、肉、魚、卵、乳製品に含まれる動物性タンパク質と、穀類や豆類(とくに大豆)に含まれる植物性タンパク質に分類され、1gあたり4kcalのエネルギー源となります。
炭素C、水素H、酸素O、窒素Nで構成され、アミノ基とカルボキシル基の両方を持つ有機化合をアミノ酸と呼んでいます。タンパク質はアミノ酸の集合体で、アミノ酸同士の結合をペプチド結合といいます。
食事から取り込まれたタンパク質は、胃酸に含まれるペプシンと十二指腸に分泌される膵液に含まれるトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチターゼ、腸液に含まれるアミノペプチターゼ、トリペプチダーゼの働きによって、ペプチド結合が切られアミノ酸に分解されます。そして小腸から吸収され血管に入り、門脈から肝臓に送られ、体タンパク質(筋肉、各組織、血液、酵素、ホルモン、免疫抗体など、体を構成していくタンパク質)の成分となります。タンパク質は、生命システムで最も多様な機能を持つ栄養素なので、エネルギー源としてよりも、体を作るために十分に利用されることが重要です。
アミノ酸は20種類あり必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類されます。必須アミノ酸は体内合成ができない、あるいは合成できても不十分であるため、必ず食事から摂取する必要があるアミノ酸で、ヒトで9種類(バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン)、犬はアルギニンを加えた10種類、猫は犬と同様にアルギニンと、厳密にはアミノ酸には分類されませんがタウリン(タウリンはカルボキシル基を持たないため)を加えた11種類です。非必須アミノ酸、アルギニン(犬猫、小児では必須アミノ酸)、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸)は、体内合成ができます。
タンパク質に含まれる窒素は、生体にとって重要ですが、消化の過程で有毒物質であるアンモニアを産生します。そのため、肝臓にはオルニチン回路(尿素回路)という解毒システムがあり、アンモニアを尿素に変換して尿中から対外へ排泄します。このオルニチン回路のためにアルギニンが必要です。犬猫では体内でのアルギニンの合成が不十分なので(とくに猫)、食事中のアルギニンが不足すると高アンモニア血症を生じ、死に至ることもあります。
また、厳密にはアミノ酸には分類されないタウリンですが、猫の健康にとっては非常に重要です。タウリンは、肉、卵、魚などの動物性たんぱく質にのみ存在し、穀類や野菜には含まれません。ほとんどの哺乳類で、必須アミノ酸のメチオニンと非必須アミノ酸のシステインから合成できますが、猫は体内のタウリン合成が微量であるため、食事から十分の量のタウリンが摂取できないと、心筋や網膜のトラブルが起こります。
タンパク質の要求量は、肉食性が高い動物ほど高くなるため、ヒトより犬、犬より猫の方が高くなっています。タンパク質の過剰摂取は、肥満、腎疾患、肝臓疾患などの原因になります。また、不足すると、成長不良、食欲不振、貧血、体毛の劣化、体重減少の原因となります。品種、年齢、ライフスタイル、健康状態などによっても異なるため、過不足なく食事管理をすることが重要です。