考えたくないことですが、ご自分の大事な動物の心肺停止(CPA)をご自宅で見つけることがあるかもしれません。死後硬直が始まっていて体が固まってしまっていたら、いくら処置をほどこしても蘇生は無理ですが、まだ温かかったら、確立は低いですがチャンスはあります。今回はその時にご自宅で可能な心肺蘇生(CPR)の方法です。
最初に、意識があるかないか、呼吸をしているかどうか、股動脈で脈があるかないかを確認します。脈・意識・呼吸がなければCPR開始です。まず、目指すのは自己心拍再開(ROSK)です。
家庭でのCPR手順
1.家族全員を呼びながら舌を引っ張る
1人でも多くの人が必要です。胸部圧迫をする人、人工呼吸をする人、病院に連絡する人、タオルなどを用意する人、車の手配をする人など、人数が多いほどCPRは上手く進みます。大声でご家族を集めてください。また、舌を引っ張ると気道が開き、呼吸が再開するかもしれません。
2.胸部圧迫(心臓マッサージ):最重要
動物の向きは右下左下どちらでも良いので(イングリッシュ・ブルドッグだけは仰向け)、背側から基本ですが腹側からでも良いので胸部圧迫を始めて下さい。(動画参照)
胸郭の1/3-1/2の深さで圧迫し胸郭復帰(リコイル)という動作を1分間に100-120回、休まないことが重要です。10秒休むと蘇生率5%低下、休む前の状態に戻すまで45秒必要といわれています。しっかりやると結構きつい処置です。基本は2分で交代といわれています。
胸部圧迫では、全身灌流の30%の維持、換気(肺血流のサポート)、冠血流の改善(リコイル時)の効果を期待します。
3.人工呼吸
1分間に10回くらいの割合で、動物の頚を伸ばして鼻から大きく人工呼吸して下さい(マウスto ノーズ)。この時、胸部圧迫とバッティングしても構いません。
また、肺水腫などの場合は、鼻や口から多量の薄い血液のような液体が出てきます。この場合は動物を逆さまにして、液体を出してください。
また、1人しかいない場合はとても厳しいのですが、30回胸部圧迫→人工呼吸(鼻先から)2回を繰り返してください。
4.除細動器(AED)
もし、近くにAEDがあれば動物にも使用可能です。基本は1回目が3J/kg、2回目は5J/kgです。この数値を参考にしてやってみてください。除細動は、心室細動(VF)、無脈性心室頻拍(VT)の時、いわゆる心臓が暴れている時に効果的です。
5.病院へ
病院と連絡が付いたら、可能な限りの胸部圧迫をしながら向かってください。この時、くれぐれも交通事故に注意して下さい。胸部圧迫は休まない方が良いのですが、飼主さんが事故に合ってしまったら元も子もありません。人数が少ない場合は必ずタクシーなどを使ってください。
股動脈は普段から触る練習をしていてもよいかもしれません。奇跡的な場合は別として、統計上はCPRを10分行っても自己心拍が再開しない場合、蘇生は困難です。それ以上の胸部圧迫は遺体を傷つけることになるかもしれません。
当院でも可能な限りの緊急の受付はしておりますが、前述のようにCPRの成功は人数がいないと難しいです。深夜の救急はDVMsどうぶつ医療センター横浜もご活用下さい。
DVMsどうぶつ医療センター横浜
TEL 045-673-1289 http://www.yokohama-dvms.com/
行かれるときは必ず当院からの照会であることを告げてください。初診料が半額になり、次の日の引継ぎもスムーズです。
以下のリンクから動画をご覧頂けます。音と通信容量にお気をつけください。
心肺蘇生(CPR)の動画