No.153 ケンネルコフ (kennel cough)

ケンネルコフは犬において非常によくみられる感染症です。犬伝染性気管・気管支炎とも呼ばれています。通常、数種の病原体、細菌やウィルスの飛沫感染によって引き起こされます。主な原因は、イヌアデノウィルスII型、イヌパラインフルエンザウィルス、犬ヘルペスウィルス、気管支敗血症菌(ボルデテラ・ブロンティセプティカ)、マイコプラズマなどです。

名前の通り主な症状は咳です。通常は荒くて大きな乾性の咳です。咳のあとに嘔吐する場合もあります。微熱や鼻汁がみられる場合もあります。興奮や運動で症状が悪化します。空気が乾燥している寒い時期に多いとされていますが、夏でも起こります。潜伏期間は3~10日と研究によって様々です。もともと若くて健康な犬がかかった場合は大きな心配はありませんが、老齢犬や幼若な犬、また免疫力の落ちてしまっている犬の場合は注意が必要です。

診断は、症状、発咳テスト(指で軽く頸部気管を圧迫します)、場合によってレントゲンなどの画像診断で行います。ケンネルコフと似た症状の病気、ジステンパーや肺炎、気管虚脱、心疾患などとの鑑別も重要です。

治療はもともと健康な犬の場合は、環境をよくしてきちんと栄養をとり、安静にしていれば、通常数日~数週間で完治しますが、こじらせると数ヶ月間咳が抜けない場合もあります(複合感染だと長引くといわれています)。首輪を使用している場合は胴輪にするなど、喉への刺激を避けます。抗生剤や鎮咳剤などが必要な場合もあります。予防は飛沫感染なのでなかなか難しいですが、咳をしている犬に近づかないこと、また、イヌアデノウィルスII型、イヌパラインフルエンザウィルスはワクチンで予防可能です。