No.141 消化管内視鏡

内視鏡とは先端に小さなレンズを付けた細い管を体の中に入れ、モニターで観察・処置・検査材料の採材をする機器です。内視鏡には、気管や気管支を観察する「気管支鏡」、鼻の粘膜を観察する「鼻鏡」、耳の奥を観察する「耳鏡」、尿道や膀胱の粘膜を観察する「膀胱鏡」、関節内部を観察する「関節鏡」、胸腔の検査・手術のための「胸腔鏡」、腹腔の検査・手術のための「腹腔鏡」、そして消化管を観察する「消化管内視鏡」があります。今回はこの消化管内視鏡のお話です。

消化管内視鏡検査は検査する部位により種類が分かれます。胃を中心に見る場合は「胃内視鏡」いわゆる胃カメラと呼びますが、食道、胃、十二指腸はまとめて上部消化管と呼ばれますので、上部消化管全体を観察する場合は「上部消化管内視鏡」となります。通常は、胃だけを観察するよりも、食道、胃、十二指腸を含めて観察することが一般的です。犬や猫では胃よりも十二指腸の方が異常が出ることが多いです。また、大腸を調べる場合は、肛門から内視鏡を挿入して、直腸を含む大腸全体(場合によって回腸も)の検査を「大腸内視鏡」にて行います。なおこの検査を上部と対比して、「下部消化管内視鏡」と呼ぶ場合もあります。

消化管内視鏡を使用する場合、ヒトと動物の一番の違いはヒトでは喉の局所麻酔と状況によって鎮静剤ぐらいで施術が可能ですが、動物の場合は基本的に全身麻酔が必要となります。また、ヒトでは人間ドックの一環として行われることが一番多いのですが、犬や猫の場合は誤食した異物を取り出すために使用されることが多いです。

消化管内視鏡検査は全身麻酔こそ必要ですが、侵襲性が低いすぐれた検査です。異物の取り出し以外にも、慢性の嘔吐や下痢などの消化器症状の診断のために使用されます。バイオプシーと言って消化管粘膜の細胞を取ってくることにより、リンパ球形質細胞性腸炎、リンパ管拡張症、好酸球性腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、リンパ腫、その他の癌などの診断が可能です。また、小さなポリープなら切除も可能です。


内視鏡