「歳だから体重が減るのは仕方ない」「食欲はあるから体重は減っても大丈夫」と思われている方は多いと思いますが、2008年のアメリカの調査では、体重の減少が少ない猫ほど長生きという結果が出ています。高齢猫の体重減少を抑えると『病気が減る』『寿命が延びる』こともわかっています。
体重の変化は主に筋肉と脂肪の減少です。体重から脂肪組織の重量を引いたものを除脂肪体重(LBM)といいます。猫のLBMは12歳から減少しはじめます。このLBMを維持することが重要です。
よくある間違いの1つは高齢の痩せた猫に低カロリーのシニア食を与えていることです。まずは痩せた原因を掴まなければなりません。とくに13歳以上の猫は体重が減ってもエネルギー要求量が上がっています。健康な成猫のタンパク要求量は5g/kgです。そのうちの34%はたんぱく由来のカロリーが必要です。老猫は消化吸収機能の減退、代謝の変化によってもっと必要です。シニア食を与えるときは注意が必要です。5%以上の体重減少は非常に危険です。すぐにきちんとした対処が必要です。
高齢猫で体重が減少してくる主な原因となるものを挙げてみます(太字はとくに多い疾患)。
食欲は正常または亢進
・代謝性:甲状腺機能亢進症、糖尿病
・炎症性:炎症性腸疾患(IBD)
食欲は正常
・代謝性:甲状腺機能亢進症、糖尿病、先端巨大症、副腎皮質機能亢進症、タンパク喪失性腎症(ネフローゼ)
・腫瘍:消化器型リンパ腫
・栄養性:不十分な栄養
・炎症性:IBD、慢性膵炎、膵外分泌不全、リンパ球性胆管炎
・感染性:消化管内寄生虫
食欲減退
・嗅覚・味覚の低下
・口腔内疾患:歯周病
・代謝性:慢性腎臓病(CKD)
・炎症性:IBD、慢性膵炎、関節炎
食欲なし
・先天性異常:門脈体循環シャント
・代謝性:CKD、甲状腺機能亢進症と併発疾患、慢性胆管肝炎、糖尿病性ケトアシドーシス、重度のネフローゼ
・心血管性:重度の心疾患と悪液質
・感染性:細菌感染と発熱
・腫瘍性:癌性悪液質
・感染性:FIV、FeLV、FIP、FVR、トキソプラズマ、クリプトコッカス、全身性真菌症
・炎症性:IBD、慢性膵炎
・特発性:乳糜胸
このようにいろいろな病気が原因となります。病気が1つでないことも多いです。痩せてきたのを早期に発見し、原因を早期に特定し、きちんとした治療をして、体重と筋肉を元に戻すことが長寿のためには必要です。
21歳の猫ちゃん