No.19 熱中症、熱射病

人でも例年の3倍の方が救急車で搬送されているそうですね。熱中症、熱射病は、急いで治療が必要な緊急疾患です。犬や猫、兎やフェッレットも、汗をたくさんかけないのと良い毛皮を着ているので、周囲の高い気温に人よりかなり弱いです。動物はもっぱら、あえぎ呼吸(パンティング)で自分の体内の温かい空気と周囲の冷たい空気を交換しようとします。周囲の気温が体温に近いと、呼吸での冷却の効き目はなくなってしまいます。とくに以下のような場合は気をつけなければなりません。

・炎天下、直射日光の下に放置

・炎天下で車内に放置

・コンクリートやアスファルトの上に放置

・高温多湿の中での激しい運動

・口輪をしてのドライヤー

・短頭種、高齢の動物

・心臓や気管、肺にトラブルを抱えている動物

・てんかんの持病がある動物

・以前に熱中症にかかったことがある動物

熱中症の主な症状は、高体温、激しいあえぎ呼吸と呼吸困難、舌や粘膜の色が鮮やかな紅色となります。唾液は濃く粘っこくなり、嘔吐、下痢が始まる場合もあります。ひどくなると、脱水が起こり、腎前性の高窒素血症となり、痙攣を起こしたり、シヨック、虚脱、DIC(播種性血管内凝固)という状態になり死亡します。

応急処置は体を冷やすことですが、最近では、氷水風呂などで、いきなり過度に体温を下げるのは良くないと言われています。涼しい部屋に安静にして、濡れタオルや霧吹きなどで少しずつ体温を下げるのが推奨されています。しかし、軽い症状の場合以外は点滴やショックの防止などの治療も必要となります。熱中症を疑ったら必ず診察を受けて下さい。

もちろん、一番大切なのは予防です。あたり前のことですが

・暑い時間帯は外に出さない、運動を制限する

・毛を短く刈る

・車内に放置しない

・いつでも水が飲めるようにしておく

・動物がエアコンが嫌いという場合でも、涼しい部屋に出入りが自由に出来るようにしておく

・散歩時は保冷剤をタオルにくるんで首に捲く

・部屋にタオルにくるんだ保冷剤を置いておく

そして1番大事なのは

暑い日はエアコンを使うこと です。

当然、節電は大事ですが、他のところで頑張っていただいて、動物のいる場所はエアコンを使いましょう。湿度や風通しにもよりますが、基本的には25~26℃くらい、人間が半袖でちょうど良いくらいが上限です。


No.18 歯石

犬や猫はあまり虫歯になりません。唾液のPHがアルカリ性で(人は弱酸性)で虫歯菌が繁殖しづらいからです。しかし、唾液がアルカリ性だと歯石は付きやすくなります。人は虫歯になりやすく、犬や猫は虫歯になりやすいということになります。

では、歯石が溜まると何が問題になるのでしょうか?歯石は細菌の塊です。とくに嫌気性菌という種類の細菌が主です。この嫌気性菌がいろいろな悪さをします。主なものは、口臭、歯が抜けやすくなる、歯周病、眼窩下膿瘍、胃腸のトラブル、心臓のトラブル。などです。

口臭は言うまでもありません。人が嫌な臭いと感じているとき、人の何千倍も鼻が利く動物たちはどんな風に感じているのでしょうか(きっと、前回の学習のところでやった馴化してしまっているのでしょう)。嫌気性菌に対して抗生剤を使うと、口臭は減りますが一時的なものです。薬を止めると臭いは戻ってしまいます。

歯と歯茎の間を歯周ポケットと言います。歯石がこの間に入ると歯茎が痩せて、歯根がむき出しになり、抜けやすい歯になります。歯石を取るときは、この歯周ポケットの掃除が重要です。麻酔をかけずにポケットの歯石を取ることは非常に困難です。ブラッシングをするときも、ポケットを意識して行うと良いでしょう。

また、歯茎の炎症がひどくなると歯肉炎が起こり、歯周病となります。歯周病の簡単な定義は『歯を支えている組織の炎症疾患』ですが、いろいろな種類があり、いずれも完治が困難なものが多いです。

眼窩下膿瘍というのは、歯根が嫌気性菌の感染によって腐り、眼の下に穴が開いてしまう状態です。特に、一番大きい臼歯の根がやられている場合が多く、麻酔下での抜歯が必要になります。

胃腸のトラブルで多いのは、口の中が痛くて食欲がなくなったり、咀嚼が上手くいかなくなり、食べ物を食道に引っかけたりするものです。

心臓のトラブルについては、嫌気性菌が血液中に入り、心筋の感染が起こり、弁膜症などの原因となることが昔から言われていましたが、この度、日本大学の上地正実先生(4年前の飼い主様向けセミナーの講師をやっていただきました)の研究室がこれを証明して、近々学会報告されます。

予防としては、やはり、毎日のブラッシングです。ブラッシングは、なるべく軟らかい歯ブラシを使って下さい。歯の一番外側をエナメル質と言いますが、人間と比べて動物は非常にエナメル質が薄いです。硬い歯ブラシだとエナメル質を壊します。歯磨き粉は使っても使わなくてもどちらで構いませんが、使う場合は、動物はうがいが出来ませんので、発泡剤(ブクブクする元)が入っていないもの、キシリトール(低血糖が報告されています)の入っていないものを使用して下さい。

しかし、どんなに一生懸命にブラッシングをしても、いつかは歯石が溜まります。歯石の付きやすさは遺伝の関与が最も大きいと言われています。ある程度の歯石がついてしまったら、麻酔下でスケーリングが必要です。前述したように、麻酔をかけずに表面の歯石をとるだけでポケットの掃除をしないのは、口臭の除去以外に意味がありません(歯の裏側もきれいに出来ませんよね)。いろいろなトラブルの元になってしまう歯石、毎日のブラッシングを頑張りましょう。


No.17 学習その4オペラント条件づけ2学習まとめ

今度は噛み付いてくる子犬を例にとってみましょう。

1 正の刺激で強化:やめたらかじり木やコングなどを与える。遊んであげる。

2 負の刺激で強化:噛んで来たら、口に手をグーにしてつっこむ

3 正の刺激で罰:ぶっ飛ばす

4 負の刺激で罰:無視、後ろを向いてしまう

2や3がよくないのは、もうおわかりだと思います。実際には、1と4を組み合わせて、噛んで来た→無視、後ろを向く→噛むのをやめた→遊んであげる。ということを繰り返すことになります。

基本的に『何が悪かったかを伝え→負の罰を与え→どうすれば良かったかを伝える』

ということの繰り返しです。動物の場合は何が悪かったのを伝えるのと負の罰は同時になりますね。その後、ある悪い行動をやめたら、おもちゃを与えたり遊んであげたりします。

罰訓練は難しいです。とくに3の正の罰は前述したように非常に困難です。ただ、天罰にした場合は使えることもあります。例えば、いつもテーブルの上に乗ってしまう猫ちゃんがいたとします。テーブルの上に両面テープを貼って、乗った猫ちゃんがびっくりして嫌がるようにします。このような使い方なら3の正の罰も有効です。繰り返しになりますが、痛みを感じる体罰はやめましょう。とくに、罰訓練においてある行動を抑制出来ないときに、さらに強い罰を与える訓練は絶対にしてはいけません。

しつけやトレーニングが上手く行かないときに、よく起こっている問題は

・バースト時に飼い主さんが頑張りきれない

・毎回無視していない

・無視が無視になっていない

・変わりに何をしたら良いのかが伝わってないので、また元にもどる

などがあります。

しつけやトレーニング、問題行動の治療は、西洋医学的な薬のように即効性があるものではありませんし、多くの問題が重なって簡単に結果が出ない場合も多いかと思います。ご家族全員の時間と根気、何より愛情が必要です。トレーニングはかわいそう。なんて声を聞くことがありますが、トレーニング、学習は動物にとっては非常に嬉しいことです(とくにワンちゃん)。きちんとした方法で根気よく続けてみて下さい。もちろん、上手く行かない場合は当院までご相談下さい。

今回の内容は、入交眞巳先生(北里大学)の横浜動物医療センターでの講義、高倉はるか先生(株式会社トリーツ)のリンゲルゼミでの講義を参考にしております。


No.16 学習その3 オペラント条件づけ1

オペラント条件づけは、道具的条件づけともいわれます。ある行動をした結果、何が起き、環境がどう変化したかによって、人も動物も適応して行動することを学習する。このような学習をオペラント条件づけという・・・わかり辛いですよね。なるべく、わかりやすく解説します。

オペラント反応とは、反応した結果に基づいて学習される反応のことで

-反応の自発頻度を高めることを→強化(Reinforcementある行動を続ける、ある行動が増える)

-反応の頻度を低くすることを→罰(Punishmentある行動をやめる、ある行動が減る)

といいます(罰という言葉が日本人の一般的な感覚とちょっと違いますね)

ある行動を続けさせたり(強化)、ある行動をやめさせたり(罰)するための刺激に、

-正(Positive加える):嬉しいこと

-負(Negative取り除く):嫌なこと

があります。

これらを組み合わせると4つのパターンが考えられます。

1 正の刺激で強化(正の強化):嬉しいことである行動の頻度を増やす→いわゆる、ご褒美を与えるトレーニング

2 負の刺激で強化(負の強化):嫌なことをなくしてある行動の頻度を増やす→馬のハミなど、痛みを取ることで行動を続けさせる

3 正の刺激で罰(正の罰):嫌なことである行動の頻度を減らす→いわゆる、体罰を与えることによるしつけ

4 負の刺激で罰(負の罰):嬉しいことをなくしてある行動の頻度を減らす→無視することである行動をやめさせる

実際の例で考えてみましょう。人に跳びつくワンちゃんの行動をやめさせたいとします。

1 正の刺激で強化:お座りをさせる→ご褒美

2 負の刺激で強化:跳びついたらつねる(イヤーレンチなど)、跳びつくのをやめたらつねるのをやめる。

3 正の刺激で罰:跳びついて来たら膝蹴り

4 負の刺激で罰:無視、後ろを向く

それぞれを検証してみましょう。

1は、跳びつくのをやめたら→お座りをさせる→ご褒美→跳びつくよりお座りの方が良いことがあるじゃん。という風に条件づけします。ポイントはお座り(伏せでも良いです)を入れることです。入れないと、跳びついたことに対してご褒美が貰えたことになります。2は跳びついている間中イヤーレンチ(ミミをつねる)などをし続けて、跳びつくのをやめたら離すというのを繰り返します。体罰の一種ですので、次の3とともにお勧めできません。3の正の罰を上手く用いるためには、毎回必ず、家族全員が、0.5秒以内に、その動物が痛くて辛いからもうその行動は繰り返さないと思えるが恐怖心を植えつけない程度の強度で、行うことが必要です・・・無理ですよね。正の罰は絶対にやめましょう。動物との関係を悪くするだけです。繰り返されれば虐待です。4は無視です。跳びついて来たら後ろを向いてしまう。これは、お勧めです。無視はとても良い負の罰です(とくにワンちゃん)。実際には1の正の強化と4の負の罰を併せて使って問題行動の治療にあたることが多いです。

オペラント条件づけ、次回に続きます。

今回の内容は、入交眞巳先生(北里大学)の横浜動物医療センターでの講義、高倉はるか先生(株式会社トリーツ)のリンゲルゼミでの講義を参考にしております。


No.15 学習その2古典的条件づけ

今回は『条件づけ(Conditioninn)』です。条件づけには『古典的条件づけ』『オペラント条件づけ』の2種類があります。

古典的条件づけはパブロフの条件づけとも呼ばれます。聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。ベルを鳴らす→食事を与える→唾液が出る。という反応が、ベルを鳴らすと食事がなくても唾液が出るという反応になったという実験は有名です(偶然の産物なのですが)。身近な例では、梅干の写真を見た→唾液が出てきた。好きな人と同じ匂いの香水を嗅いだ→ドキドキした。天気が悪くなってきた→雷恐怖症の犬がパンティングしだした。などがあります。多くの問題行動の原因となる反応です。

では、古典的条件づけは実際にはどのように使うのでしょうか。例えば、雨が降って雷が鳴ると涎を垂らし興奮する。というようなワンちゃんの場合。雨降り→雷→恐怖という反応を、雨が降ったら→楽しい遊び時間+おやつというような条件づけを行い、雨降りは楽しい時間への合図とすることによって恐怖症を克服させます。また、前回の脱感作と組み合わせて、男の人が嫌いなワンちゃんを治療しようとするときに、初日は15mぐらいの距離からおやつを数回投げてもらいます。次の日は14m、その次の日は13m、12m…0mとだんだん距離を縮めて行きます。距離を縮めるのは脱感作。おやつを与えて、男の人→怖いを、男の人→おやつ→嬉しいとするのが、古典的条件づけです。前回も申し上げましたが、複数の方法を組み合わせることによって効果が上がります。また、無駄吠え→ダメだよ。などと声をかける→かまってもらえる→嬉しいという風に条件づけされてしまっている場合は、無駄吠え→無視、ケージに入れてしまう→吠えてもしょうがない→無駄吠えをやめる。

というように条件づけをするのもひとつの方法です。

条件づけによって形成された反応が消失または源弱することを『消去(Extinction)』と言います。上記の例では、雷が怖くなくなる、男の人が怖くなくなる、無駄吠えをしなくなる。というのが消去です。注意しなければならないのは、消去の前に、必ずバーストが認められることです。無駄吠え→無視、ケージに入れてしまう→吠えてもしょうがない→無駄吠えをやめる。という条件づけがきちんと完了する前に、無駄吠えは必ず一度ひどくなります。このときに、飼い主さんが負けてしまって、声をかけたり、構ってしまうと、ワンちゃんは、無駄吠え→無視→ひどくなった無駄吠え→やっと構ってもらえた。と条件づけされ、今まで以上に頑張って吠えるようになります。ご自宅での問題行動の治療の上手く行かない理由の多くがここにあります。

ややこしいでしょうが、頑張って理解していただくと、動物と接するときに楽しみが1つ増えると思います。次回はオペラント条件づけです。

今回の内容は、入交眞巳先生(北里大学)の横浜動物医療センターでの講義、高倉はるか先生(株式会社トリーツ)のリンゲルゼミでの講義を参考にしております。


No.14 学習その1 馴化、洪水法、脱感作

『しつけ』『トレーニング』については、みなさん興味があると思います。『しつけ』『トレーニング』の元となる『学習』の理論についてです。

経験による行動や心理の変化を学習といいます。学習の理論を知るとしつけやトレーニングに生かせますし、問題行動の改善に役立ちます。また、間違った認識のしつけやトレーニングは百害あって一理なしで、人も動物も不幸です。

まずは『馴化(Habituation)』です。刺激の繰り返しにより反応が減少することを馴化といいます。平たく言えば『慣れる、慣らさせること』です。例を挙げると、カレー屋さんに入った時に、カレー独特の強い香辛料やスパイスの匂いがしますよね。しかし、カレーを食べ終わるときにはお店の匂いはほとんど気にならなくなっていると思います。他人の車に乗ったときなどにも同じような経験をされるのではないでしょうか。また、子犬に初めて首輪を装着したとき、最初は非常に気にしますが、徐々に馴れて気にしなくなります。これも馴化です。馴化をしつけやトレーニングに利用したものに、『洪水法(Flooding)』と『脱感作(Desensitization)』があります。

洪水法は、子犬のうちに触りまくって人の手に馴れさせる。犬のお腹を上にして(服従のポーズ)押さえつけ、人間がリーダー(アルファ)だということをわからせる。などがありますが、うまく行く場合もあるのですが、刺激が強いので注意が必要です。とくに、後者のような体罰を用いたしつけやトレーニングを行うのは非常に困難です。お勧め出来ない方法です。また、前者の方法にご褒美を用いると、トレーニングの効果がアップします(触られる→おやつが貰える→嬉しい。触られる=嬉しいことと。なります。これを古典的条件づけと言います。次回に解説します)

脱感作は、刺激の強度をだんだんと強めることで徐々に刺激に慣らさせる方法です。アレルギー治療の減感作療法と同じ原理です。不安や恐怖症のときに用いると効果的です。例としては、犬嫌いな人が、犬を飼っている友人ができ、少しずつ犬と対面するうちに犬が大丈夫になる。猫アレルギーの人が、仕事で猫と少しずつ接しているうちにアレルギーが出なくなる。実際には、男の人が嫌いなワンちゃんを治療しようとするときに、初日は15mぐらいの距離からおやつを数回投げてもらいます。次の日は14m、その次の日は13m、12m…0mとだんだん距離を縮めて行きます(ご褒美は古典的条件づけの方法です。次回に解説します。複数の方法を組み合わせることによって効果が上がります)また、ご褒美、おやつはほんの少量でオーケーです。たくさん貰っても少量でも嬉しさは一緒です。貰えたってことに意味があります。

今回の内容は、入交眞巳先生(北里大学)の横浜動物医療センターでの講義、高倉はるか先生(株式会社トリーツ)のリンゲルゼミでの講義を参考にしております。


No.13 エンリッチメント

環境エンリッチメントという言葉が、最近、動物園や水族館の飼育動物の世界でよく聞かれます。『動物福祉の立場から、飼育動物の幸福な暮らしを実現するための具体的な方策』という意味です。飼育場所を広くしたり、本来の生息地の環境に近づけたり、給餌回数を増やしたり、自由に遊べる時間を増やしたり・・・動物園や水族館の職員の方々は限られた場所、費用、時間の中でいろいろなアイディアを出されています。映画にもなった、旭川の旭山動物園は有名ですし、海外にはびっくりする様な規模の動物園がたくさんありますが、身近な動物園や水族館でも多くの工夫がされています。お時間がある時、野毛山動物園の高齢ラクダのツガルさんに会いに行ってみて下さい。その一端に触れられます(同時に飼育係の方々の大変さも伝わってきます)。

エンリッチメントを一般家庭で飼育されているペットたちに当てはめて考えてみて下さい。温度、湿度、食事の質、量、お散歩や遊びなどの運動。動物とストレスの研究は、まだまだ十分とはいえませんが、手の平をペロペロ舐め続けているワンちゃん、いつもお腹を舐めている猫ちゃん、お水を過剰に飲むウサギちゃん、肥満のハムスターちゃんの中には、エンリッチメントを考えることで改善する子たちがたくさんいると思います。

とくに今年は、これからの暑い季節、東日本大震災、原発事故のため、エアコンを使用し辛い状況です。可能ならば、毛を短くカットする。アイスノンのようなものを上手く使う。日陰を多く作るなどの工夫が必要です。ただ、心臓が悪い子、短頭種の子たち、暑さに極端に弱いチンチラなどにはエアコンは必要です。他のことで節電を頑張っていただいて、最低限の環境は作ってあげて下さい。熱中症に注意です。


No.12 シャンプー

シャンプー剤の選択と頻度についてよくご質問を受けます。全てのワンちゃん猫ちゃんに適応できる答えは難しいですが、まずはシンプルに考えてみましょう。

シャンプー剤は非常に多くのものが出回っています。ペットショップやネットで手に入るものに病院で処方される薬用シャンプーなどを併せたら100種類を超えるでしょう。この中からそれぞれに適したものを探す時のポイントがいくつかあります。

まずは『リンスインシャンプーはなるべく使わないこと』です。リンスインシャンプーは時間や手間は省けますが刺激は3~5倍と言われています。人でも以前ほど使用されなくなってきたのではないでしょうか。

次に『ノミ取りシャンプーは使用しないこと』現在フロントライン始め、スポットタイプの駆虫薬の時代です。ノミ取りシャンプーの成分のアレスリンよりも安全性が高いものばかりです。ノミ取りシャンプーを使うメリットは全くありません。

皮膚にトラブルを抱えている場合は『皮膚がカサカサなのかベタベタなのか』を考えてみて下さい。乾燥肌と湿性肌は当然ながら使用するシャンプーは異なります。乾燥肌には保湿性の良いもの、湿性肌には脂を良く落とすものを使用します。薬用シャンプーといってもこれを間違えると逆効果になってしまいます。

頻度については、シャンプーを選べば毎日出来るのもありますが、目安として、暑い時期は週に1度、涼しい時期は2週に1度、皮膚炎の管理には週に2度がお勧めです。柴犬や猫ちゃんなど、シャンプーが大嫌いな場合はブラッシングを一生懸命にやっていただくことにより回数を減らせます。もちろん飼い主さんの事情も重要です。無理は必要ありません。

いずれにしても、迷われている場合は、使用されているシャンプー剤を持って病院にご相談下さい。これからの暑い時期シャンプーは大事です。


No.11 フィラリア予防

フィラリア予防

今年もそろそろフィラリア予防のシーズンです。今回はフィラリア(犬糸状虫、Heartworm)についてです。

まずは一番重要なこと

『フィラリア症は犬にとって死に至る疾患であるが、必ず予防出来る疾患である』

私が幼稚園児だったころでから今から約40年近く前ですが、かわいがっていた甲斐犬が腹水が溜まり亡くなったのを今でも鮮明に覚えています。

フィラリア症という病気は蚊を媒体として感染する寄生虫疾患で、成虫は主に肺動脈や右心室に寄生し、犬に右心不全徴候(腹水、肝障害など)肺高血圧などを生じさせ、治療が間に合わなければ死に至ります。また、急性のフィラリア症は後大静脈症候群(VCS)と呼ばれ緊急の手術が必要です。

成虫は♂が約15cm♀が約30cmあり乳白色で茹でた素麺のようです。虫が毒素を出したりするのではなく、物理的に血流を阻害することによって上記のような症状を起こします。成虫がL1(1期幼虫)を産み→蚊が吸血時にL1を吸い→蚊の体内でL1→L2(2期幼虫)→L3(3期幼虫)と発育し→また今度はL3が蚊の吸血時に吸血孔から犬の体内へ戻り→L4(4期幼虫)→L5(5期幼虫)→成虫という発育環を7~8ヶ月かけて繰り返します。

今のところ予防は、1ヶ月に1度の飲み薬、1シーズンまたは1年間効果のある注射などが一般的です(これからはスポットタイプも信頼性が上がれば使われるようになるかもしれません)。いずれの薬も予防薬というよりは駆虫薬です。犬の体に進入した幼虫を殺す薬です。飲ませた日から約1ヶ月前に侵入した幼虫をやっつけます。ですから予防薬は蚊の出始めた次の月(横浜では5~6月ぐらい)から蚊がいなくなった次の月(11月~12月)までが投与期間です(1年間効果のある注射はいつ射っても良いことになります)

どの予防法をチョイスされても良いのですが、シーズン最初の薬の投与前か注射の前には必ず血液検査を受けて下さい。もし、フィラリアがいることが疑われたなら対処は違ったものになります。もちろん100%の検査は存在しませんが、1年に1度の簡易的な健康診断の側面もあります。近年では、毎年きちんと予防しているワンちゃんたちには、健康診断としてのウェートの方が大きいですね。

しつこいですが、もう一度

『フィラリア症は犬にとって死に至る疾患であるが、必ず予防出来る疾患である』


No.10 犬、猫に与えてはいけない食品、薬  その2

よく質問されるものに牛乳があります。犬も猫も離乳時から乳糖分解酵素(ラクターゼ)がどんどん減ります。そのため、過剰な乳糖を摂取すると下痢を起こします。もちろん個体差があり、牛乳を飲んでも下痢をしないワンちゃん猫ちゃんもたくさんいます。発酵によって乳糖が分解されているヨーグルトやチーズは少量なら大丈夫です。

生肉については賛否両論あります。野生の狼や虎は生肉を食べてるじゃないか、など…しかし、生肉を食べなれていない場合は消化不良の原因になりますし、新鮮さの問題もあります。お肉の専門家の方ならともかく、加熱調理をしていただいた方が無難です。まあ、お刺身なんかを少量ならば、全く問題ないと思いますが。

子供を育てたことがある方はよくご存知だと思いますが、ハチミツも注意が必要です。まれですが、ボツリヌス菌が入り込むことがあります。筋肉の麻痺が起こり、呼吸ができなくなり死亡する場合があります。とくに消化管の粘膜や免疫機構が出来上がっていない子犬、子猫には与えないで下さい。

ご存知ない方が多いのがブドウです。原因ははっきりとわかってないのですが、腎不全を起こした犬の例が報告されています。

最近はいらっしゃらないと思いますが、猫を長期間に渡りドッグフードで飼育すると、タンパク質をはじめ猫に必要な栄養素が不足します。

また、塩分の多いもの、香辛料が多く刺激の強いものなども与えないほうが良いのは言うまでもありません。

我々が診療に用いている約8割が人体用のお薬です。しかし、動物に与える量は単純に体重比ではありません。また、少量でも犬猫には重大な副作用が生じる薬もあります。とくに、抗癌剤、抗精神薬は重篤な症状が出やすいです。誤って飲んでしまった場合は、すぐにご連絡下さい。かぜ薬、正露丸なども危険な場合があります。漢方薬、サプリメントも、人には良いけれど動物には有害というものがありますし、他の薬との飲み合わせの問題が出ることがあります。使用したい場合はご相談下さい。