全身性炎症反応症候群(SIRS)は『各種の侵襲により免疫担当細胞、あるいは炎症細胞が刺激を受け、炎症性サイトカインを産生し、それが血中へ入って全身を循環し全身的な炎症反応を引き起こしている状態』と定義されます。侵襲によって生体がどの程度反応しているかを知るためのものです。
SIRSは、手術、外傷、熱傷、炎症、感染症などの様々な侵襲によって起こります。本来のバランスを失ってしまったサイトカインが暴走している状態です。言い方を変えると、SIRSは高サイトカイン血症であるとも言えます。(サイトカインの内、IL-1,IL-6,IL-8,TNF-αなどを炎症性サイトカインと呼びます)
SIRSの状態になると、サイトカインの増加により準備された好中球が組織を攻撃してしまい、組織の酸素代謝がうまくいなくなり、最終的に多臓器不全になり、死にいたることもあります。ヒトでは発症者の約30%がショックを引き起こすとされ、一見元気そうに見えていても、SIRSの基準を満たし、さらに要因を多くもっている場合は急変する危険性が高いとされています。
また、SIRSはの概念は、様々な侵襲によって、生体が全身的な炎症反応を引き起こしているかどうかを、簡単に把握できる警告信号として利用することができます。
当然、動物の場合は、品種、年齢や環境などによっても心拍数、呼吸数、体温などは影響を受けますし、上記の基準に完全に沿った場合、集中治療の必要のない症例も多く拾ってしまい、死亡率が10%のものと50%以上のものをひとくくりにしてしまうという問題点がありますが(10%でも十分高い死亡率ですが)、比較的簡便なので,獣医学領域では、現場で多用されている概念です。
白血球以外はご自宅でも簡単に測定できる項目です。手術後や感染症の治療中で、ご自宅でケアする場合、飼主さんは理解しておいた方が良いと思います。
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No142 サイトカイン