No.137 不整脈 (Arrhythmia)

先日、アイドルをやっていた女子高生が突然亡くなり、原因が不整脈だといわれていました。動物でも不整脈はあり、統計上はヒトより多くみられます。とくに症状がなくて、無治療や経過観察のみでよいものもありますが、虚脱や失神、重度のものは放っておくと突然死が起こるものもあります。

不整脈の診断の第一歩は聴診、次に心電図(ECG)です。他の疾患が原因だった場合など、普通の心電図でもわからない不整脈もあるので、血液検査や超音波、ホルター心電図などの追加検査が必要な場合も多いです。今回は犬や猫でよくある不整脈をご紹介します。

正常な心拍数の目安は、犬で1分間に70-160回、猫で120-200回ぐらいです。不整脈には様々な分類方法がありますが、わかりやすくするために、この目安より遅いものを徐脈性不整脈、早いものを頻脈性不整脈に分類し、頻脈性不整脈は上室(心房)性と心室性に分けて考えます(実際には分類が難しい場合もあります)。

徐脈性不整脈

・洞性不整脈(SA)
吸気時に心拍数が上昇、呼気時に減少する不整脈。基本的には治療の必要はありません。

・洞不全症候群(SSS)
心臓の調律を発する部分を洞房結節といい右心房にあります。この洞房結節の機能が低下して生じる不整脈を洞不全症候群(SSS)といいます。洞不全症候群は、洞性徐脈、洞停止、洞房ブロックなどが複合して発生するもので、M.シュナウザー、M.ダックスフント、A.コッカースパニエルに多く、無症状の場合もありますが、アダムス・ストークス発作(失神)を起こすときは治療が必要です。I型からIII型に分類されています。迷走神経緊張、低体温、甲状腺機能低下症、高K血症などの他の疾患が原因の場合もあります。
I型:持続性の洞性徐脈
II型:洞房ブロック(S-Aブロック)、洞停止(Suinus arrest)
III型:徐脈と頻脈の繰り返し

・房室ブロック(AVB)
房室ブロックとは、心房から心室の電導遅延または途絶を意味し、程度によって第1度、第2度(MobitzI型、MobitzII型、高度)、第3度(完全)房室ブロックに分類されています。MobitzII型以降の房室ブロックは治療の必要があります。猫の失神を引き起こす房室ブロックは高度房室ブロックです(発作性房室ブロックとも呼ばれます)。高度房室ブロック、第3度房室ブロックでは突然死の可能性があります。

頻脈性不整脈

・上室性不整脈
上室性不整脈で最もよく遭遇するのは、僧房弁閉鎖不全症の末期に出現する、心房細動(AF) です。この不整脈が出てしますと僧房弁閉鎖不全症は予後不良です。このような事態にならないよう、僧房弁閉鎖不全症は早期からの治療が必要です。

・心室性不整脈
心室性不整脈の代表は心室期外収縮(VPC)で、様々な心筋症でよく出現します。ヒトでよく脈が飛ぶと表現されます。単発のものは経過観察でよいのですが、多発性、連続性の場合は治療が必要です。

不整脈のうち無症状なものは、健康診断などで偶然に見つかる場合も多いです。お家での対応は、安静時に胸を触って心拍数やリズムをみてみて下さい。以上がありそうな場合はご相談下さい。

心房細動の犬の心電図