No.134 プラークコントロール (Dental plaque control)

歯周疾患の原因は歯垢(プラーク)です。歯に付いたネバネバです。犬や猫は唾液のpHや成分、歯の形状がヒトと違うため、虫歯にはなりにくいですが、歯周疾患には非常に多く罹患します。歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨のことを歯周組織といいます。歯周疾患は歯の病気ではなく、これらの歯周組織、歯の周りの病気です。歯周疾患が進むと、これらの歯周組織が崩壊して、歯肉が後退し骨の吸収が起こります。歯が家だとすると土台や基礎の崩壊と例えられます。3歳を超えた犬猫の8割以上が歯周疾患になっているという報告があります。

歯周疾患の予防には日頃からのプラークコントロールが重要です。現在、犬用のおもちゃ、ガム、ヒヅメ、歯のためのおやつなどがペットショップにたくさん並んでいて、歯茎のマッサージになる、歯が強くなる、歯石が取れるなどをうたい文句にしてますが、実際はどうでしょうか?
犬や猫は硬いものを与えると、奥歯のみを使って噛みます。これは犬や猫の歯が裂肉歯といって、獲物を引きちぎって飲み込む構造になっているからです。同じ歯ばかりにストレスがかかると歯が割れます。我々は臼歯の破損をよく診ます。また、これらで歯石が取れることもありません。ガムなどで歯石が取れるなら、ヒトでもわざわざ歯医者さんに行く必要はありません。

犬でも猫でも(ヒトでも)プラークコントロールには歯ブラシによる歯磨きが重要です。メインとなる毛先の柔らかい歯ブラシに加え、いろいろな形状の歯ブラシ、綿棒やガーゼ、指サックなども使うとやりやすいです。磨くときは、歯の表面のネバネバを取ることと、歯周ポケットを意識しましょう。最初は嫌がる場合が多いので、長時間行わず、少量のご褒美をうまく与えるなどして行ってください。また、最初は外側だけでも結構です。口の中を触られることに抵抗のないように徐々に慣らしましょう。口を全く触らせてくれない場合は、口を触る事から訓練するしかありません。焦らずに時間をかけて慣れてもらいましょう。歯磨きをさせてくれる場合でも、ある程度の間隔(通常は1~3年毎くらい)で、歯石の除去を含めた口腔内のケアを全身麻酔下で行う必要があります。詳しく聞きたい方は診察時にご相談ください。

最後によく誤解されている点を2つ。まずは、歯石を取ると歯石が付きやすくなるというのは都市伝説です。きちんとした処置をすれば、処置後に歯石が付きやすくなることはありません。また、無麻酔での歯石除去はほとんど意味はありません。歯周ポケットや歯の裏側の歯石がきちんと取れませんし、口腔内を精査することもできません。臭いの除去くらいにはなるかもしれませんが、きちんとした歯周疾患のケアのためにはおすすめできません。

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