「動物から人間に感染する、または感染すると思われる疾患」を人畜共通伝染病、ズーノーシスと呼びます。最近は鳥インフルエンザなども話題になっていますね。代表的なズーノーシスをご紹介します。
原因がウィルスによるもの
狂犬病:ほぼ全ての哺乳類に感染するウィルス性疾患です。感染した動物の唾液の中にウィルスが含まれ、咬まれることによって感染します。症状は1~3週間の潜伏期間のあと、発熱や食欲不振が出てきます。進行すると、痙攣や麻痺、水を呑み込めない(恐水症)などの神経症状を起こします。治療も困難で死亡率も高いです。日本では、狂犬病予防法の元、ワクチンによる予防が普及したことと、島国である利点もあり、約50年間発生がありませんが、海外との行き来が多い昨今、いつまた入って来てもおかしくない病気です。こちらもご覧ください。
No7 狂犬病予防注射
No47狂犬病予防注射について
鳥インフルエンザ:鳥インフルエンザとは鳥類に対して感染性を示すA型インフルエンザウイルスからの感染症です。ヒトでは、感染した家禽(鶏、あひる、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥、七面鳥)個体やその排泄物、死体、臓器などと濃厚な接触がない限り感染はしません。鶏肉や鶏卵を食べることによってヒトに感染はしません。お家の中で飼われている小鳥も同様で、簡単に伝染するものではありません。
ヒトでの最初の症状は、発熱や咳で通じようのインフルエンザと変わりませんが、重症化すると、全身倦怠感、筋肉痛などの全身症状を伴います。感染したヒトの致死率は、これまでのところ全体で約60%と高い数値です。ちなみに、通常の季節性のインフルエンザの致死率は0.1%です。
家禽での症状は、震え、起立不能、斜頚などの神経症状が見られたり、沈鬱、食欲低下、急激な産卵低下(停止)がみられることもあります。また、しばしば臨床症状を示さず死亡することもあります。予防・治療は法律によって 殺処分および移動・搬出制限によりまん延防止、早期撲滅を図ります。
セキセイインコや文鳥などの小鳥の症状は、きちんとした臨床報告がなく、わかっていません。ただし、家禽のウィルスから感染が成立するということは実験で証明されていますので、野鳥にはなるべく触らないようにしましょう。
ヘルペス:ヒトの口唇ヘルペスはヒト単純ヘルペスI型(HSV-1)によって引き起こされます。ほとんどは無症状ですが、免疫が低下したときに、熱の華、風邪の華、帯状疱疹、Cold soresと呼ばれる症状が現れます。経験のある方はご存知だと思いますが、めちゃめちゃ痛いです。HSV-1の感染はOral-Oral(キスという意味です)で幼少期に感染して、三叉神経に潜伏し終生感染し、定期的に再発します。WHO(世界保健機構)の試算では、全世界の50歳以下の約3人に2人が感染しているとされています。ヒトの症状は、通常2週間ほどで収まりますが、ウサギやチンチラ、新世界ザル(アメリカ大陸のサル、リスザル、マーモセット、タマリンなど)は死亡することがあります。
ウサギやチンチラは近年ペットとして人気の動物ですが、実験においてHSV-1への感染が証明されています(自然感染は稀です)。症状はヒトと違い、活動の低下/増加、運動失調、旋回運動、流延、失明などの神経症状が出ます。とくに鼻腔内からの感染では最短2日で症状を呈し、急速に死に至ることがあると報告されています。
また、旧世界ザル(ユーラシア大陸、アフリカ大陸のサル、マントヒヒ、オナガザル、ニホンザルなど)はヒトと同じような症状を呈しますが、新世界ザルはHSVに対して感受性が高く重度の全身性疾患を起こして、死亡することがあります。
いずれにしても、口唇ヘルペスが発症しているときに、これらの動物の世話をするときは、なるべく触れ合わない、マスクをする、手をよく洗うなどの注意が必要です。