No.119 テフロン (Teflon)

テフロンは商品名で、ポリテトラフルオルオエチレン(PTFE)というフッ素樹脂です。テフロン加工された調理器は摩擦係数が低く、焦げ付き辛いのが特徴で、物質自体の安定性もあり、水、酸、熱などにも強いので、フライパン、炊飯器、鍋など調理器具によく使われています。しかし、このテフロンが生体に対して毒になる場合があることがあり、テフロン中毒、フッ素中毒などと呼ばれています。

ヒトの場合のテフロン中毒はフライパンを火にかけながら居眠りをしてしまった場合などに起こります。PTFEは高温約400℃になると、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、プロペン、フロロメタン、ブテンなどのさまざまな有毒ガスを発生します。400℃というのは火力にもよりますが、フライパンを5分加熱すると到達できる温度です。これらのガスは目に見えず臭いもほとんどありません。これらを吸引するとヒトでは数時間後に、呼吸困難、めまい、吐き気、頭痛など、ポリマーヒューム熱というインフルエンザのような症状を起こすことが知られています。通常は適切な治療で回復しますが、放置すると肺水腫となり死亡例もあります。

動物ではとりわけ、セキセイインコ、文鳥などの小鳥に事故が多いです(犬の報告例もあります)。鳥類は肺のガス交換の効率が良いため、一般的にガス毒に感受性が高く、PTFEの発生するガスにたいしても重篤な症状を示します。症状は呼吸困難で肺の出血と浮腫が起こります。肺が溶けているような病理所見がみられます。

テフロン加工製品はきちんと使用すれば便利なものだと思います。しかし、小鳥を飼っている方は、調理中は同じ部屋に入れないなど、十分な注意をして下さい。