ミニュチュアダックスフントを始め、シーズー、ペキニーズ、コーギー、コッカー、ビーグル、フレンチブルドッグなどの軟骨異栄養犬種(軟骨の変性が起こりやすい遺伝子を持った犬種)は日本でとても人気があります。これらの犬種に起こりやすいのが椎間板ヘルニアです。
椎間板は脊椎骨と脊椎骨をつないで、背骨にかかる衝撃を吸収してくれる役割をしています。椎間板の中身を椎間板物質(髄核)といいゼリー状です。この椎間板物質が変性すると軽い衝撃にも弱くなり、はみ出してすぐ上の脊髄神経を圧迫します。そのために痛みや麻痺が出ます。これが椎間板ヘルニアです。
典型的な症状としては、急に両方の後肢がおかしくなります。臨床的に5つのグレードに分類されます(最も一般的な脊髄神経T3からL3の間の病変の場合をご紹介します)。
グレード1:背中を痛がる。背中を丸めて震える。歩けるが歩きたがらない。
グレード2:不全麻痺。歩けるが後肢の爪を擦る。後肢を突っ張って歩く。ナックリングをする。
グレード3:完全麻痺。後肢を突っ張って前足だけで歩く。後肢が交差してしまう。お尻の辺りの皮膚の痛みがない。自力排尿は可能。
グレード4:後肢が全く動かず前に伸ばしたまま。随意排尿がない。指先の痛みはある。
グレード5:後肢は全く動かない。指先の痛みもない。
また、残念ながら亡くなってしまう場合もあります。脊髄軟化症といって脊髄の炎症が局所にとどまらずどんどん拡がってしまう病態です。今のところ治療法はありません。
グレード5の5%ぐらいがこのパターンを取るといわれています。
各種の神経学的検査をして部位を特定して行きますが、確定診断には、脊髄造影、CT、MRIなどが必要です(いずれも全身麻酔が必要となります)。
次回は治療、予防の話です。