No.523 ワクチン(Vaccines)

ワクチンには、コアワクチンとノンコアワクチンがあります。

コアワクチン(Core Vaccines):
・すべての犬猫に接種が推奨されるワクチン
・命に関わる病気、または感染力が強く、広範囲に流行するおそれのある病気を予防
・感染すると重症化しやすく、治療が難しい疾患が多い
・ヒトや他の動物に感染する「人獣共通感染症(ズーノーシス)」も含まれることがある
犬のコアワクチン(全ての犬に推奨)
1. 犬ジステンパーウイルス(CDV)
2. 犬パルボウイルス(CPV)
3. 犬アデノウイルス-1型(CAV-1:犬伝染性肝炎)
4. 犬アデノウイルス-2型(CAV-2:犬伝染性喉頭気管炎)
CAV-1とCAV-2は共通抗原のため、通常はCAV-2のワクチンで対応
この4種を含む混合ワクチンが「5種ワクチン」などとして普及しています
猫のコアワクチン(全ての猫に推奨)
1. 猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス)
2. 猫ウイルス性鼻気管炎(FHV-1)
3. 猫カリシウイルス(FCV)
※これら3種を含む「3種混合ワクチン」が一般的です。

ノンコアワクチン(Non-Core Vaccines):
・すべての動物に必ずしも必要ではなく、生活環境や感染リスクに応じて選択的に接種
・特定地域、集団飼育、外出習慣がある動物など、リスクがある場合に接種を検討
・ワクチンによっては副反応リスクがやや高いものもあり
犬のノンコアワクチン(生活環境やリスクに応じて接種)
1. 犬パラインフルエンザウイルス(CPI)
2. 犬コロナウイルス(CCV)
3. レプトスピラ症(複数血清型あり:カニコーラ、イクテロ、グリッポチフォーサなど)
4. ボルデテラ・ブロンキセプティカ(ケンネルコフの原因菌)
5. 狂犬病ワクチン(RV):日本では法律で毎年1回の接種が義務付けられていますが、ワクチン分類上はノンコアワクチンです
猫のノンコアワクチン(生活環境やリスクに応じて接種)
1. 猫白血病ウイルス(FeLV)
2. 猫免疫不全ウイルス(FIV)
3. 猫クラミジア感染症(Chlamydophila felis)
4. 猫ボルデテラ感染症(Bordetella bronchiseptica)
5. 狂犬病ワクチン(日本では猫への法的義務はなし、海外渡航などで必要な場合あり)

VGGのワクチン接種のガイドライン
世界小動物獣医師(WSAVA)のワクチネーションガイドライングループ(VGG)は、世界的に適用できる犬と猫のワクチネーションガイドラインの作成を目的として組織された団体です。
VGG は母親由来の移行抗体(MDA)が、幼少期の子犬や子猫に現在使用されているほとんどのコアワクチンの効果を著しく阻害することをアナウンスしています。MDAのレベルは同腹子間でも大きなばらつきがあるため、子犬や子猫に対してはコアワクチンを複数回、最後の回が16週齢またはそれ以降となるように接種し、次いで生後6または12ヵ月でブースター接種を行うことを推奨しています。
また、成体に安易にワクチン接種することにも警鐘を鳴らしています。VGCによると、コアワクチンの接種に反応した犬猫は、再接種を行わなくても強固な免疫を何年も維持するとされています(免疫記憶)。26~52週後に再接種を行った後は、3年もしくはそれ以上の間隔をあけて再接種を行うことを推奨しています。ただし、ノンコアワクチン、特に細菌抗原を含有するレプトスピラワクチンなどには適用されません。

当院が勧めるコアワクチンのガイドライン
・生後2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目、1歳の誕生日の接種
・その後、年1度程度の健康診断時に抗体値検査
・3-5年後に再接種
ノンコアワクチンのガイドライン
・犬の狂犬病は法定接種なので年1度
・他のものは必要に応じて

注意点
・ワクチンメーカーの製剤添付文書には製剤の品質、免疫持続期間(DOI)が示されていますが、DOIは実験的エビデンスに基づいて決定された最小値であり、実際のDOIを反映したものとは限りません。ほとんどの犬猫のコアワクチンに関して、最短のDOIが1年間とされていたため、年1回の再接種が推奨されていました。
・ドックラン、ペットホテル、トリミングサロン、マンションなどの集合住宅、一部の動物病院などで、1年以内のコアワクチンの証明書がないとサービスを受けられない場合があります。
・各ワクチンの摂取は最低3週間以上の間を空ける必要があります。