No.506 モルモットの子宮疾患

モルモットの子宮疾患はウサギと同様に、子宮内膜炎、子宮水腫、子宮蓄膿症、子宮腺癌、子宮平滑筋肉腫、腺扁平上皮癌などがあります。基本的に卵巣疾患が原因です。不妊手術をしていない4~5歳以上で多く発症が見られます。ある程度進行しないと症状を見せないため、なかなか気が付きにくい疾患の一つです。

一番最初にみられる症状は血尿です。血尿は尿全体が赤くなったり、尿の中に血の塊がみられたり、鮮血が陰部から出てきたりと程度や状態は様々です。持続的に血尿がみられることは稀で、時々血尿になったり普通の尿になったりを繰り返すことが一般的です。また、初期には一過性のことも多く様子を見てしまいがちです。乳腺の腫れや腹部膨満などの症状が見られることもあります。重症になると元気や食欲がなくなってきます。

診断は超音波検査やレントゲン検査で行います。あまり大きくなってない子宮の場合は判断が難しい事もあります。また、可能なら血液検査も行い、他の病気との区別や重症度の判定を行います。

治療は、抗生剤や止血剤、ホルモン剤などで症状の改善がみられることもありますが、内科療法で完治させることは困難です。放置すると腹腔内出血や腹水貯留、播種性血管内凝固症候群(DIC)を起こし手遅れになってしまうこともあるので、なるべく早期に卵巣子宮摘出手術を行います。

ここまではウサギの子宮疾患とほとんど同じですが、モルモットは卵巣が腹腔内の深部にあって、通常の腹部正中切開では展開が難しいため手術が困難です。状況によっては左右の腰背部の切開が必要な場合があり麻酔時間が延びます。また、痛みやストレスにも弱く、犬や猫だと通常行える、静脈点滴や気管チューブの挿入、静脈点滴、血圧測定などの各種のモニターも行えないものが多いです。しかし、病気が進行し貧血や多臓器に癒着を起こしてしまうと手術のリスクがより高くなるので、メリット、デメリットを理解してなるべく早期に手術することが重要です。確定診断には摘出した卵巣・子宮の病理診断が必要です。

予後は原因よって異なりますが、早期発見して手術・治療をして、悪性のものではなかった場合は予後は良好です。

クリックすると手術時の写真が出ます。苦手な方は見ないで下さい。
摘出したモルモットの卵巣と子宮