咳は気道内に貯留した分泌物や異物を気道外に出そうとする生体防御反応です。過剰な咳は動物のQOL(Quality of life;生活の質)を低下させます。咳が続く場合は、まず、1.持続期間、2.種類、3.原因部位を考えていきます。
1.持続期間
・~2週間:発咳が始まって2週間くらいの場合の急性の咳の原因はボルデテラなどの感染症の場合が多く、同居動物の状態、ホテルやドッグランなどでの他の動物との接触、発熱や炎症マーカーの上昇などから判断します。
・2週間~2ヶ月:2週間から2ヶ月よくならない咳の原因は、免疫疾患やホルモン疾患(クッシング病など)、ステロイド剤や鎮咳剤による気道クリアランスの低下が考えられ、感染症の可能性は低くなります。
・2ヶ月~:感染症以外の原因を考えます。感染症の場合は耐性菌の出現や2次感染を考慮します。
2.種類
・湿性の咳:気道内分泌物(痰)が増加する疾患。慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支肺炎、誤嚥性肺炎、猫の気管支炎、喘息など。鎮咳剤は禁忌です。
・乾性の咳:喀痰を伴わず機械的刺激が関与する疾患。喉頭炎、心拡大による気管支軟化症、左主気管支の菅外性圧迫、腫瘍など。
3.原因部位
呼吸器の3区分
・咳のタイミング:
上気道性(喉頭性);摂食・飲水時、吠えた時、興奮時、寝起き時
中枢気道性;動作・散歩時、興奮時
末梢気道性;安静時、睡眠時、寝起き時
・咳のタイプ:
咳反射;深い吸気が先行する咳→末梢性
呼気反射;深い吸気が先行しない咳→ 喉頭性、中枢性
・Terminal retch(おじさんのえずきのような症状)の有無:
必発→喉頭性、末梢性
必発ではない→中枢性
・咳時の様子:
立ち止まる→喉頭性、末梢性
動き回っている→中枢性
・咳の持続時間:
単発性→喉頭性
持続性→中枢性、末梢性
1回の咳の時間:
短い→喉頭性、中枢性
長い→末梢性
喉頭性:主に上気道の疾患:
摂食・飲水時、吠えた時、興奮時、寝起き時
咳時は立ち止まる
単発性で短く強い
Terminal retchを伴う
中枢性:主に気管・気管支(気道内径2mm以上)の疾患;
動作・散歩時、興奮時
動き回りながらの咳
持続性
Terminal retchは必発ではない
末梢性:主に末梢気道(気道内径2mm以下)、肺実質の疾患;
安静時、睡眠時、寝起き時、散歩時には少ない
咳時は立ち止まる
持続性の長い咳、高調
Terminal retchを伴う