肺は、酸素を取り込み二酸化炭素を排出していて、肺胞という小さな小部屋がたくさん集まってできています。肺胞のまわりには毛細血管が張り巡らされていて、肺胞内の空気と毛細血管内の血液との間で酸素と二酸化炭素が交換されます。このメカニズムが破綻して、肺の毛細血管から肺胞内へ血液の液体成分が過剰に漏れ出てしまう状態を肺水腫といいます。
肺水腫が起こる原因は大きく分けて2つあり、1つは、心臓病が原因の「心原性肺水腫」、もう1つは、心臓病以外が原因の「非心原性肺水腫」です。肺は空気を取り込む場所なので、液体が溜まると呼吸がしづらくなり呼吸困難になります。重症例では命に関わります。犬や猫の他、フェレット、ウサギ、ハムスターなど多くの哺乳類が肺水腫になる可能性があります。
主な症状は
・呼吸数が増える
・開口呼吸をする
・歯茎や舌が白っぽいあるいは紫色っぽい
・横にならずに座るか伏せる状態で苦しそうに呼吸をする
などです。
心原性肺水腫は一般的に重篤なことが多く、救急管理が必要になります。一方、非心原性肺水腫は軽症から重症まで様々です。軽症の場合は軽い咳が出るくらいですが、重症の場合、呼吸が速くなったり、咳を頻繁にするなどの症状がみられます。
心原性肺水腫
心臓病(犬では僧帽弁閉鎖不全症、猫では心筋症など)により、心臓から全身に流れていく血液量が低下し、心臓内に血液が残ってしまいます。そのため、肺から心臓へ血液が戻りにくくなり、毛細血管がうっ血を起こし、逃げ場を失った毛細血管内の液体成分が肺胞内へにじみ出てしまうことが原因となります。
非心原性肺水腫
チョークチェーン(首がきつく締まるタイプの首輪)による気道の閉塞、火事などによる煙の吸引、電気コードを齧るなどの事故により、肺の毛細血管が病的な変化を起こし、毛細血管から液体成分が肺胞内へ浸出しやすくなることが原因となります。
心原性の場合は、集中的な治療が必要で基本的に入院管理となります。まずは、安静にして、酸素室などの利用により高濃度の酸素を吸入します。次に利尿剤や血管拡張薬などにより、循環血液量をコントロールして心臓の負担を和らげます。非心原性の場合は、炎症を抑える薬を使用したり、重症の場合は心原性の治療と同じように酸素室での入院になることもあります。
僧帽弁閉鎖不全症の犬、心筋症の猫では、安静時に1分間あたり40回以上の呼吸をしている時は肺水腫になっている可能性があります。元気そうに見えても緊急の治療が必要な場合が多いです。
犬の心原性肺水腫のレントゲン