犬の尿漏れ(失禁)の原因は尿道括約筋の異常です。膀胱から尿が漏れないようにする尿道括約筋が、自律神経でコントロールされている内尿道括約筋と、体性神経(運動神経と感覚神経)でコントロールされている外尿道括約筋の2種類あるため、原因は大きく2つに分かれます。
自律神経は意思ではコントロールできません。腰の背骨(脊椎)やその中を走る神経(脊髄)に異常があると、内尿道括約筋を閉める力が弱くなり、ひっきりなしに尿が漏れます。そのような場合は自律神経を強める薬を使います。
体性神経は意思の力でコントロールできます。避妊手術や去勢手術をしたワンちゃんでは、女性ホルモンや男性ホルモンが少なくなるために、意思でコントロールできる外尿道括約筋が薄く弱くなります。意思が及ばない睡眠中に尿が漏れます。これを「ホルモン反応性尿失禁」と呼びます。このような場合はホルモン剤を使い、尿道を閉める筋肉を回復させます。
いろいろな薬がありますが、犬に女性ホルモンを与えると回復の難しい貧血になる場合があるため、不妊手術後のメスに対しても男性ホルモンを与える場合があります。効果は女性ホルモンとほとんど変わりません。ほとんどの場合は3週間ほどで効果が出ます。大型犬では超音波検査で尿道括約筋の厚みを測り、回復の度合いを調べることができますが、小型~中型犬では、薬の量を減らして症状をみることが多いです。投薬を止められる場合と生涯に渡って必要な場合があります。