No.335 犬のレプトスピラ症 (Leptospirosis)

先日、逗子海岸でレプトスピラに感染して亡くなった犬の報道がありました。レプトスピラ症は、スピロへーター科・レプトスピラ属の細菌によって引き起こされる人畜共通伝染病です。犬だけでなく、牛、馬、豚、山羊、羊などの家畜をはじめ、ネズミやコウモリ、キツネなどの野生動物を含む多くの哺乳類に感染します。ヒトでは4類感染症に定められ、動物では一部の血清型が家畜伝染病予防法により届け出義務があります。

菌の感染はレプトスピラ症に罹っている動物の尿中に排泄された病原体を直接あるいは間接的に取り込むことによって成立します。つまり、尿で汚染された水や食物を摂取することで起こるということです。媒介の主役は都市部ではネズミだといわれています

レプトスピラ感染症は世界的に広く分布し特に高温多湿の熱帯亜熱帯で発生が多く、日本では関西以西での発生が主となっています。犬での発生状況は減少傾向ですが、毎年30件前後の発生報告があります。

感染した動物は急性の風邪の様な症状から、黄疸・出血・発熱・腎機能不全・肝機能不全を伴う症状を示します。一方で感染してもほとんど症状を示すことなく、菌を排出し続ける場合もあります。動物の種類によっては数週間から数年に渡り菌を排出します。また、犬は他の動物種よりも、腎不全・肝不全になる場合が多く、ハムスターは感染すると1週間ほどで死亡すると言われています。

診断は、禀告、臨床症状、菌の動態、抗体の推移等も考慮して総合的に行います。近年では血液を用いたPCR法・血清学的診断法の組み合わせにより確定診断します。潜伏期間は、数日から20日程度で、感染後1~3週間後に抗体価は最大になります。菌は発症前から間欠的に血中に現れ、抗体価の上昇とともに血中から消失し、尿中に排出されます。

治療は対症療法が中心で、腎障害、肝障害に対する治療、消化器症状に対する治療、DIC(→No144播種性血管内凝固症候群(DIC))に対する処置が必要となるケースもあります。病原治療としてはペニシリン、ドキシサイクリンなどの抗菌剤を使用します。

横浜市でこの病気を過度に恐がる必要はありません。全国手的にも感染犬はとても少数ですし、早期に発見してきちんとした治療をすれば助けられることの方が多いです。また、血清型が合わないと意味がないのですがワクチンもあります。当院にも御用意があります。ご心配な方はご相談下さい。


レプトスピラ症のワクチン