何らかの理由で食事が取れなくなった動物に対し、体の外から胃に直接食べ物を運ぶ道を胃瘻(いろう)と呼び、そのチューブを胃瘻チューブといいます。口や喉の病気で物理的に食べることが出来なくなってしまって長期間食事が出来ない場合や、大きな病気で食欲がなくなってしまい治るための栄養が足りなくなる場合などに、体に充分な栄養を与えるために行う治療です。化学療法を行う場合も設置することがあります。
胃瘻とは直接胃に設置するチューブ全般を指しますが、PEGとはPercutaneous Endoscopic Gastrostomyの略であり、消化管内視鏡を用いて設置する胃瘻チューブのことを指します。全身麻酔は必要ですが、通常15-20分で設置可能です。消化管内視鏡を用いずに開腹手術にて直接チューブを設置する場合もあります。
病気と闘うためには栄養が必要です。動物が十分に食事を取ってくれている場合には栄養が足りていますが、大きな病気と戦っている時に食欲が減ってしまうことは少なくありません。動物がご飯を食べることを嫌がる場合にはヒトが助けてあげなくてはいけません。強制給餌では、流動食などを動物の口に運んであげて食べさせる必要がありますが、なかなか食べてくれないことも珍しくありません。一生懸命食べて貰おうとしても逃げてしまったり、嫌がって口を閉ざしてしまうこともあります。口や喉の病気などでは飲み込むことが出来ない場合もあります。そんな場合にはチューブを使って直接胃に送ってあげることで必要な栄養を取ることが出来ます。
胃にチューブを設置するということに抵抗感がある飼主さんは多いと思います。しかし、胃瘻チューブによって動物は口からイヤイヤご飯を食べなくても栄養を取ることが出来ます。動物はじっとしているだけですみますし、飼い主さんも嫌がる動物に無理をせずに治療を行うことが可能となります。同時に薬も入れることも可能です。全身麻酔の負担はありますが、それを乗り越えてしまえばメリットの方が多いです。胃瘻チューブの設置は積極的な治療のために行うことであり、”無理な延命”のために行うものではありません。病気と闘っている動物を助けてあげるとても大事な方法の1つです。
胃瘻チューブ