精巣腫瘍は去勢をしていない雄において比較的多くみられる腫瘍です。犬とウサギによくみられ、猫では稀です。特に、生後に陰嚢内に精巣が降りてきていない停留精巣の犬においては、正常に精巣下降した場合と比べて精巣腫瘍になるリスクが高いと言われています。また、精巣腫瘍は主にセルトリ細胞腫、精上皮腫(セミノーマ)、間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)と呼ばれる3種類の腫瘍に分類され、それらはほぼ同じ割合で発生し精巣腫瘍のほとんどを占めます。
セルトリ細胞腫:セルトリ細胞腫の犬の30%において高エストロゲン血症に伴う雌性化した乳房や左右対称性の脱毛などが特徴的な身体検査所見として認められます。また、血液検査において好中球減少、血小板減少、再生不良性貧血などを認める場合もあります。セルトリ細胞腫は、通常は良性の挙動を示し転移は稀(15%以下)とされていますが、肝臓や肺、リンパ節等へ転移することもあります。
精上皮腫(セミノーマ):セミノーマは潜在精巣において認められることが多く、セルトリ細胞腫と同様に高エストロゲン血症に伴う症状が認められる場合もあります。転移は稀ですが、リンパ節や肺への転移することがあります。
間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫):間質細胞腫の多くは1cm以下の結節性の病変であり臨床的に問題とされていない精巣において偶発的に発見されることが多い腫瘍です。高エストロゲン血症に伴う症状はセルトリ細胞腫やセミノーマに比べると少なく、転移することは極めて稀です。
診断には視診、触診の他、超音波検査を用いた精巣腫瘤の確認が必要であり、針吸引による細胞診検査によって暫定的に診断が行えますが、確定診断には病理組織学的な評価が必要となります。また、外科的な手術の前には、転移の有無や全身状態を確認するための血液検査やレントゲン検査、また場合によってはCT検査を行う必要があります。
治療は腫瘍の外科的摘出が第一選択となります。精巣腫瘍は転移の可能性が少なく、去勢手術によって大半は治癒します。しかし、稀に転移が認められる症例もあり、そのような症例は精巣に加えて転移部位の外科的切除も考慮し、追加の放射線治療や化学療法による治療を必要とする場合があります。また、再生不良性貧血を呈した場合は輸血等の対症療法以外に有効な治療法はありません。
ウサギの精巣腫瘍