No.170 ビタミン(Vitamin)

ビタミンは微量で生理機能の調節を行う有機化合物です。脂溶性ビタミンA、D、E、Kと、水溶性ビタミンのB群、Cに分類されます。脂溶性ビタミンには油脂に溶ける性質があり肝臓に蓄積されます。そのため、脂溶性ビタミンの過剰摂取は中毒症状をおこします。ビタミンAは野菜や果物に含まれているイメージが強いですが、実際に含まれているのはβカロテンというビタミンAの前駆物質です。ビタミンAはバターや肝臓などの動物性食品のみに含まれています。食事から摂取したβカロテンは、犬やヒトでは肝臓でビタミンAに変換できますが、猫はできないため、動物性食品からビタミンAを摂取することが必要です。経口摂取されたビタミンは主に小腸から吸収されます。

水溶性ビタミンは、水に溶けるので過剰な分は尿中に排泄されます。そのため、過剰摂取となるのは稀ですが、軟便、下痢をおこすことがあるといわれています。犬や猫ではヒトや猿などの霊長類、モルモットなどが体内合成できないビタミンCを体内合成することができます。そのため、サプリメントなどで過剰摂取するとシュウ酸カルシウムの尿石症を引き起こすことがあります。ビタミンB群は、エネルギー変換の補酵素、神経機能の調整、赤血球の構成成分などに重要な働きをしています。働きも多く水溶性で損失しやすいため、食事からの十分な摂取が必要です。また、生魚や甲殻類にはビタミンB1の吸収を阻害するチアミナーゼという酵素が含まれています。このようなものばかり食べていると、下痢、嘔吐などの消化器症状が生じ、重症化すると神経症状を呈し死に至ることがあります。猫にイカを与えると腰を抜かすなどと昔からいわれているのはこのためです。ローフード(生食)を行うときには注意が必要です。

βカロテン、ビタミンE、ビタミンCには抗酸化作用があり、活性酸素で細胞が障害を受けるのを防ぐ作用があります。疾病や肥満などで体内の活性酸素が増加する環境では、βカロテン、ビタミンE、ビタミンCの必要量が増加します。また、ビタミンの過不足は生体機能の調整に影響を与えます。例えば魚の不飽和脂肪酸は、活性酸素と結合して病気の引き金となる過酸化脂質を生成しやすいという性質がありますが、それを防止するのがビタミンEの抗酸化作用なので、ビタミンEの少ない食事を与えていると猫の黄色脂肪症が起こります。

ビタミンB群とビタミンKは腸内細菌によって体内合成が可能ですが、腸内環境が悪い場合や、抗生物質を使用している場合は注意が必要です。ビタミンDは紫外線を浴びることで体内合成できますが、犬猫では合成量が十分ではありません。また、犬はアミノ酸のトリプトファンから ナイアシン(ビタミンB3)を体内合成できますが、猫はできません、不足すると皮膚炎が起こることがあります。また、猫ではシアノコバラミン(ビタミンB12)の欠乏で嘔吐、下痢、食欲低下、活力低下、貧血などを引き起こすことが知られています。

ビタミン一覧表