尿管とは腎臓と膀胱を連絡する尿の通り路です。近年、猫で尿管にカルシウム系(シュウ酸カルシウムが98%)の結石が詰まる尿管結石が多発しています。尿管閉塞が起こると、1週間で腎機能の30%が、6週以内にすべての腎臓の機能が失われます。片側だけの場合は多くは無症状ですが、両側性の場合は尿が出ないので急性の腎不全となり、3-6日以内に死亡します。早期に発見したい病気の1つです。ヒトの場合と大きく違うのは、ヒトの場合の尿管結石は激痛がありますが、猫では痛みをあまり示さないことです。
原因は食事、遺伝の他、上皮小体機能亢進症や悪性腫瘍が基礎疾患としてある場合もありますが、多くは特発性(原因不明)です。
基本的な診断は、病歴、症状、身体一般検査に加え、尿検査、血液検査、結石を見つけるためレントゲン検査(尿路造影含む)、超音波などの画像診断を行います。現在は性能が良くなった超音波検査が主流です。しかし、猫の尿管の直径は約1mm、尿管結石の大きさは0.3-0.4mmです。結石が小さいこと、レントゲンに映らないタイプの結石が40%くらいあることなどから確定診断が難しい場合があります。超音波では実際の結石を発見すること、腎盂の拡張、尿管の拡張の所見などを探します。また、実際の手術時に結石の位置が画像診断の通りでないこともよくあります。
尿管の炎症が治まり、結石が自然に流れてしまうなんていう幸運なものも稀にありますが、通常はきちんとした治療が必要です。内科的には、点滴、αブロッカー、利尿剤、ステロイドなどが使われますが、外科手術が選択されることが多いです。とくに両側性の場合は緊急です。両側性で尿が出ない場合、24時間の内科的な治療で改善が認められなければ手術が必要です。手術法は、尿管切開-縫合、尿管膀胱吻合、尿管瘻、腎瘻、尿管ステント、皮下尿管バイパス(Subcutaneous Ureteral Bypass:SUB)などを状況に応じて行いますが、多く行われているのは、尿管を切開して結石を取り除く尿管切開-縫合です。この手術もマイクロサージェリー(顕微鏡や拡大鏡を使った微細な手術)となります。しかし、手術がうまく行っても22%の症例で尿管狭窄、40%の症例で再発があるという統計があります。なかなか手強い病気の1つです。
予防は基礎疾患があればその治療と、カルシウムを減らした食事療法、飲水量を増やすことなどが重要です。また、前述のように片側だけだと無症状なので、定期健診で早期に発見することが大切です。
腎盂の拡張した腎臓のエコー所見