No.189 膵炎(Pancreatitis)

膵臓は胃と十二指腸のとなりにくっついている臓器で、消化酵素やホルモンを分泌しています。この膵臓に炎症が起こることを膵炎と呼びます。膵臓の酵素は膵臓内では不活性の状態で存在し、腸内に分泌されて初めて活性化されます。この動態が何らかの原因で乱れ、膵臓内において膵酵素が活性化された場合に膵炎が起こります。

原因は、犬の場合、胃腸炎による激しい嘔吐・膵管閉塞・腹部の外傷・薬物投与・ウィルス感染などによる膵臓の障害が原因とされています。中年齢以上の犬での発症が多く、雌での発生が比較的高いです。ミニチュア・ダックスフント、ミニチュア・シュナウザー、プードル、コッカー・スパニエル、ウェスティなどの発症率が高いといわれています。脂肪分の多い食事を食べている犬や、肥満犬に発症する傾向があります。猫の場合は、ウィルス性疾患やトキソプラズマ症などの感染症、胆管肝炎、炎 症性腸疾患による炎症が膵臓に波及することが原因とされています。猫でも中年齢以上で多く認められます。しかしながら直接的な原因はまだわかっていません。また、犬でも猫でも普段から吐いているのを放っておくと、膵液の逆流が起こり膵炎になることがあります。

犬や猫が膵炎になると、食欲がない、食べたものや胃液を吐く、軟便、下痢、腹部の疼痛などの症状が現れます。猫の膵炎では、なんとなく食欲がない、なんとなく元気がないなどと症状がはっきり出ない場合もあります。膵炎には、急性のものと慢性のものがありますが、急性膵炎が重症化するとDIC(→No144 播種性血管内凝固症候群)の状態になって命を失うこともあります。

膵炎の診断はおもに血液検査と超音波検査で行います。血液検査では、現在犬と猫の膵炎の診断に最も活用されているのは、PLI(膵特異的リパーゼ)測定です。近年日本で迅速に検査結果が得られるようになり、約80%の診断精度があります。超音波検査では、腫大した膵臓と膵臓周囲の腸間膜の輝度亢進、膵管の拡張、腹水など診断に有用な所見が得られます。報告では、犬の急性膵炎の70%で超音波検査の異常があると示されています。

膵炎は点滴や薬で治療しますが、治るのには時間がかかります。また、いったん治っても再発して慢性化しやすいので、脂肪分の少ない食事を与えるなど、日々の注意が必要です。