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No.217 小鳥の卵詰まり

セキセイインコや文鳥、ラブバードなどの小型の鳥種によくみられる疾患の1つに卵詰まり(卵塞)があります。
鳥類では、体内で卵を形成するのには大体24~28時間かかるといわれています。卵詰まりとは何らかの原因で卵が24~72時間経過しても産卵されない状態です。

主な原因はカルシウム不足による卵管の収縮不全と卵形成の異常です。卵殻の形成にカルシウムが使い果たされていると、卵管の収縮がおこらず産卵することが出来なくなります。また、卵形成が正常に行われないと変形卵や未熟卵になり、通過障害が起こって産卵がうまくいかなくなります。他にも、環境ストレスや運動不足、栄養障害など、原因は様々です。鳥類の繁殖期は通常春~夏ですが、条件さえ整えば通年発情となり、飼育下の小鳥では過発情も卵詰まりにつながる大きな要因の1つになっています。

卵詰まりの症状には以下のようなものがあります。

・腹部が膨らんでいる
・お腹を触ったら何かある
・息んでいる
・過剰産卵をしている(1週間毎は異常)
・毛引き
・ディスプレー(求愛行動)を繰り返している
・床に下りて膨らんでいる
・総排泄腔から白いものや赤いものが出ている
・起立困難、元気、食欲低下

上記のように症状は様々です。停滞した卵によって腹腔内の臓器や気嚢が圧迫されて呼吸状態が悪かったり、腹部に重度の疼痛があるなど非常に危険な状態の場合もあります。急速に悪化し、軽症にみえても急死することもあります。卵詰まりは命にかかわる油断の出来ない疾患です。

稟告、症状、触診、レントゲンや超音波検査などで確定診断し、治療の最初はカルシウム剤の投与を行います。低カルシウム性の卵管収縮不全による卵塞の場合は、カルシウム剤の投与後に産卵することが多いのですが、それでも正常な産卵が起こらない場合は、腹腔内の卵を手で圧迫しながら総排泄腔側へたぐり寄せ排出させます(危険ですのでご自宅では絶対にやらないでください)。卵管口がうまく開かなかったり、卵と卵管が癒着していたりする場合は、卵に注射針などで穴をあけ、中身を吸引してから卵殻を取り出す場合もあります。以上のような方法で卵排出ができない場合、卵が異常な位置にある、癒着している、すでに破卵している場合などでは、開腹手術を検討する必要があります。

卵詰まりを起こした鳥は続けて卵詰まりを起こす可能性があります。適切に飼育環境を管理して過発情を誘因しないようにすることが大切です。予防は、

・カルシウム、ビタミンやミネラルの投与
・適度な日光浴
・過度な高温環境を避ける
・1日8時間以上の明環境を避ける
・除湿
・高カロリーの食事(ペレット、野菜など)を避ける
・発情を引き起こす視覚刺激(異性、鏡、ヒトの姿・声・コミュニケーション)を与えない

などがあります。どうしても発情兆候が止まらない場合は、薬剤を使用することもあります。


外科手術によって取り出した、破卵、癒着していた卵
こちらもご参照下さい
No127小鳥の腹囲膨大


No.216 紫外線(Ultraviolet rays)

近年、紫外線の害が数多く報告されています。紫外線によって生じるシミ、シワ、たるみは光老化と呼び、ヒトの肌老化の3大特長といわれています。白内障にも紫外線が影響しています。また、老化の原因の1つの活性酸素も生成するともいわれています。紫外線には波長によって以下の3種類があります。

UVA:地表に届く紫外線の95%を占めます。波長が長く、雲や窓も透過します。主に真皮に作用し、ハリや弾力を生むコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを作り出す繊維芽細胞に損傷を与えます。その結果、UVAを浴びた肌は弾力を失い、シワやたるみといった肌の老化現象を引き起こすと考えられています。UV-Bほど有害ではありませんが、長時間浴びた場合の健康影響が懸念されています。日焼けサロンはこのUVAを照射しています。
UVB:地表に届く紫外線の5%を占めます。ほとんどは大気層(オゾンなど)で吸収されてしまいますが、一部は地表へ到達し、皮膚や眼に有害です。海や山で多くなります。波長が短く主に肌の表面の表皮とメラノサイトに作用しUVAより強いエネルギーを持ちます。UVBはさらに、メラニン色素の合成を増やし、シミが目立つ原因をつくります。日焼けを起こしたり、皮膚がんの原因となることもあります。
UVC:大気層(オゾンなど)で吸収され、地表には到達しません。

では、動物ではどうなのでしょうか、ヒトには見えない紫外線が犬には見えているという説もあります。現在では、ヒトと同様に犬や猫も紫外線の影響を受けると考えられています。とくにお散歩に行く犬、短毛種、薄い毛色のワンちゃん、サマーカットをした場合などは紫外線の影響を受けやすく注意が必要です。

散歩時の紫外線対策としては、紫外線の強い時間帯の散歩をさける、なるべく日陰を利用する、UVカットの服、UVブラッシュアップミストなどがあります。動物にも紫外線ケアの時代が来ました。

もちろん、紫外線にもメリットがあって、過度に紫外線を浴びることは皮膚のトラブルの原因となりますが、紫外線には殺菌効果があるので、皮膚の殺菌やカビや菌の予防にも効果があります。また、紫外線にあたることで、カルシウムやリンの吸収を助けるビタミンDを皮膚で合成したり、セロトニンというホルモンを分泌するといわれてます。セロトニンには精神を落ち着かせたり幸福感を高める作用があります。心身の安定のためにとても大切なホルモンです。犬や猫が日向ぼっこをしてお昼寝している姿はとても気持ちよさそうですよね。

環境省のホームページもご覧ください(ヒト向けです)
https://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/full.pdf

アメリカで25年間トラックの運転手をやっていた方(69歳)
左側から強く紫外線を浴びていたため、このような左右差が生じた


No.215 犬の皮膚腫瘤

犬の皮膚の腫瘍はよく見られます。アジアの国の犬の皮膚の腫瘍の疫学を調査した統計は、今までほとんどありませんでしたが、今回、日本の犬の皮膚腫瘍の有病率、一般的な腫瘍タイプの発生と、犬種、年齢、性別、解剖学的位置の関係を調査した論文が東京大学の先生方から発表されました。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31257236

論文の要点は
・2008年~2017までの皮膚腫瘍の1435症例を調査した
・813頭(56.66%)は悪性腫瘍、622頭(43.34%)は良性腫瘍だった
・軟部組織肉腫(18.40%)、肥満細胞腫(16.24%)、脂肪腫(9.69%)、毛包腫(9.34%)、良性皮脂腺腫(8.50%)は他の腫瘍タイプより多かった
・腫瘍があった場所は、頭部(13.87%)、後肢(10.52%)、前肢(8.01%)、胸部(5.78%)、頸部(5.57%)だった
・皮膚腫瘍の発生リスクは、11歳以上の犬で有意に増加した
・雑種犬(14.63%)、ミニチュアダックスフンド(9.90%)、ラブラドールレトリバー(8.01%)が腫瘍が多く見られた3犬種だった
・ボクサー、バーニーズマウンテンドッグ、ゴールデンレトリバーは雑種犬と比べ、皮膚腫瘍発生のリスクが増大していた
などでした。

犬の皮膚腫瘤の半分以上が悪性腫瘍という結果です。悪性腫瘍のうち、軟部組織肉腫、肥満細胞腫が多いのは、自分の肌感とも一致していますが、こんなに悪性腫瘍の割合が多いのには驚きました(大学病院は状況も違うと思いますが)。皮膚に腫瘍を見つけたら、まずはFNA検査(細い注射針を腫瘍に刺して細胞を採り、染色して顕微鏡で観察する検査)がおすすめです。100%の精度はありませんが、今後の方針をたてられます。

犬の皮膚腫瘤


No.214 梅雨と夏の温度と湿度 

今年も蒸し暑い日が続いています。この時期に犬や猫を体調不良から守るには、室温23℃以下・湿度(相対湿度)40%が理想です。しかし実際にはこの数字は難しいので、室温25℃以下・湿度50%以下(最低でも60%以下)を目指してください。

特に湿度が重要です。湿度が60%以上になると、各種の細菌や真菌(カビ)が被毛の根本や毛穴、皮膚、外耳で増殖し、皮膚や外耳のトラブルを起こしやすくなります。そのため6~8月は皮膚炎、外耳炎が多発します。エアコンにはドライ機能があるものが多いですが、室温だけが下がり過ぎて、湿度が下がっていない場合が多々みられます。できれば湿度計を用意していただくのがベターです。湿度が下がり過ぎるとヒトの喉が乾燥するので40%以下にはしない方が良いです。温度が高い方が空気中に含むことができる水蒸気量(飽和水蒸気量)が多くなるので、湿度50%でも、室温が30℃と10℃の時は空気中に含まれる水分量は3倍以上違います。

世界にいる犬や猫のほとんどは、進化の過程で25℃以下の環境で過ごしてきたと考えられています。現在の横浜市の夏ような30℃を越える環境は、犬や猫にとても厳しい環境です(いつも野良ネコちゃん、地域ネコちゃんたちを心配してます)。温度の上昇によって、汗をあまりかけない犬や猫では、呼吸による体温低下が難しくなります。そのため、熱疲弊によって、皮膚炎だけでなく、循環器疾患、呼吸器疾患なども悪化しやすくなります。とくに、パグやブルドッグのような短頭種、黒い被毛の動物、高齢動物は注意が必要です。


短頭種は暑さに注意!

こちらもご参照下さい
No124夏に気をつけたいこと


No.213 動物愛護法の改正

犬や猫に「マイクロチップ」装着を義務付けることなどを柱とする改正動物愛護法が6月12日、成立しました。生後56日(8週)以内の犬や猫の販売禁止、動物虐待への罰則強化も盛り込まれました。

改正法では、犬や猫の販売業者に対し、マイクロチップの装着と所有者情報の環境相への登録を義務付けています。マイクロチップの装着の義務付けは、飼い主がペットを安易に捨てることを防ぐほか、災害などで迷子になった際に役立ちます。また、登録された犬猫を購入した飼主さんは、引っ越しや譲渡などがあった場合、情報変更の届け出も義務となりました。既に飼っている飼主さんには、装着の努力義務です。
改正法は他にも、出生後56日(8週)経っていない犬や猫の販売を原則禁止しました(一部の日本犬を除く、後述)。現行法では49日(7週)でした。
また、近年多く報道されている動物の虐待への罰則も強化されました。現行法では、動物を殺傷した場合「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」を科していましたが、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に引き上げられました。
これらは原則、公布から1年以内に施行されますが、マイクロチップの義務化は3年以内、56日規制は2年以内とされました。

とても良い法改正だと思いますが、56日規制は「日本犬保存会」と「秋田犬保存会」が、秋田犬や柴犬などの日本犬は規制の対象外とするよう求め、柴犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、北海道犬、秋田犬の6種がこの規制の対象から外れました。「天然記念物の保存のため」という理由だそうで、49日と56日で科学的根拠がないというデータもあるそうですが、この時期の子犬の1週間は、ヒト場合の数ヶ月~1年くらいにあたる大事な時期です。この1週間に、天然記念物の保存のためのどんな意味があるのでしょうか?早く足並みを揃えて欲しいものです。


No.212 飼主がストレスを感じると犬のストレスレベルも上昇する

とても興味深い論文を読みました。スイスのリンショーピング大のリサ・ロス先生のもので、犬は飼主さんの不安やストレスを敏感に感じ取って、コルチゾール(ストレス時に分泌されるホルモン)を多量に分泌するというものです。

こちらに論文がわかりやすくまとめられています
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5439695

ポイントとして以下の3つが挙げられています。
1.犬は飼主さんの不安やストレスを敏感に感じ取る
2.飼主さんの髪の毛のコルチゾール値が高いほど、犬の毛のコルチゾール値も高い
3.飼主さんが神経質だと、犬のコルチゾール値が下がる

1と2についてはなるほどと思いますが、3については個人的に別の見解があります。飼主さんが過度に神経質で、犬を溺愛してしまい、コルチゾールが分泌され過ぎて枯渇してしまい、アジソン病(副腎皮質機能低下症)という病気を発症しているパターンがあると思います。アジソン病は初期のうちは症状がわかりづらいことが多く、早期での発見が難しい疾患の1つです。何事にもちょうど良いは難しいですが、動物との程よい距離感が大事だと思います。

以下もご参照ください
No80副腎皮質機能低下症


No.211 小鳥の排泄物

セキセイインコ、コザクラインコ、オカメインコ、文鳥やキンカチョウなどの小鳥の排泄物は健康状態を示唆しています。小鳥は排泄孔が肛門と尿道口に分かれておらず、一つの排泄孔より糞便と尿が同時に排泄され、排泄物は便(主に緑褐色)、尿(透明)、尿酸(白色)で構成されます。正常な便の色は小鳥の種類や食事によって異なりますが、今回は異常な便についてご紹介します。

緑色便
絶食便:小鳥が絶食状態になると、濃緑食の胆汁と腸粘膜の排泄が行われ、見た目には濃緑色、少量、下痢状の便が排泄されます。これを「絶食便」と呼びます。
溶血便:重度の溶血が起こると、破壊された赤血球から血色素(ヘモグロビン)が溶出し、大量のビリベルジン(緑色)が生成され、排泄量も増加し便が濃緑色になります。また、便中のビリベルジンが尿中にも溶け出し、尿も濃緑色になります。溶血の原因が鉛などの重金属中毒の場合、便は光沢を帯びた青緑色(ビリジアン色)となります。
着色便(緑色):緑色のペレットやサプリメントなど着色料の付いた食事を食べると便が緑色になります。
高脂肪食便:ヒマワリなど脂肪種子を常時与えていると、胆汁が多く分泌され緑色便となります。

白色便
消化不良によりデンプンや脂肪が便に多く排泄されると、便は白くなります。

黒色便
タール便:胃などの上部消化管からの出血、気道の出血や外傷などから大量の血液を飲んだ場合、血色素が胃酸によって塩酸へマチンと酸化されて黒くなります。
着色便(黒色):炭や鉄剤などの投与、黒色系の食餌から黒色となります。

赤色便
血便:赤色付着物がある場合、血液が混じっている血便である可能性があります。排泄孔、排泄腔、下部消化器(下部小腸、直腸、結腸)、生殖器、腎臓のいずれからの出血により血便が起きます。
着色便(赤色):便がまんべんなく赤色で形が正常な場合、ニンジンや赤色ペレットなどの食べ物由来で便が赤くなっている状態が考えられます。

グリット便
グリットとは筋胃内に停留する砂のことで、多くの場合ボレー粉や塩土などの鉱物飼料です。グリットが便に出てくるということは、鉱物飼料を食べ過ぎているか、蠕動亢進により筋胃内より流出していることを示しています。グリットが筋胃内に過剰に停留すると吐き気が出ることがあります。

完穀便、全粒便
完穀便、全粒便とは、穀粒がすり潰されず、不完全な状態で便に混入した状態です。鳥類は歯を持たないため食物を丸呑みします。よって穀類のような硬い食物を摂取する鳥種では筋肉が発達した筋胃を持っており、この中で前述のグリットと共に穀物をすり潰しています。完穀便、全粒便が出るということは、この筋胃に障害があることを示しており、カンジダ、メガバクテリア、寄生虫等の感染、胃炎や胃がん、胃の蠕動運動異常などが考えられます。

大型便
便の大きさが通常より大きい場合、発情中の雌鳥であれば正常です。雌鳥は繁殖行動中は巣箱の中にこもることが多いため、総排泄腔の糞洞が拡張し、便を貯めてから排泄するようになります。この状態はエストロジェン分泌性の精巣腫瘍でもみられ、この場合雄でも大型便をするようになります。
また脊髄の障害や腹腔内のマス、腹壁ヘルニアによる排便障害時も大型便になることがあります。この場合、大量の便の貯留によって総排泄腔が拡張します(メガクロアカ)。自力で出せない場合には、ヒトが指で補助して排便をさせる必要があります。

尿酸の黄色化
尿酸の黄色化がみられた場合は、肝炎または脂肪肝などによる肝細胞障害が考えられます。診断にはレントゲン検査、超音波検査、血液検査などが必要です。

尿酸の赤色~オレンジ色化
尿酸が赤色~オレンジ色化している場合は、心疾患を患う鳥の心拍数が亢進し溶血が起こった場合や過度に動いたことによる筋肉の損傷、重金属中毒による溶血などが考えられます。

赤色尿
水分尿が赤色をしている場合は、重篤な溶血により血色素が尿中に出てきていることを示唆します。重金属中毒でみられることがあります。

異常な臭い
正常な鳥の便はほとんど臭うことはありません。もし異臭がするようであれば、腸内細菌叢の異常や排便障害等により総排泄腔内に排泄物が長時間留まっていることを示唆しています。雌の発情時は臭いが出ることもあります。これは、前述のように、発常時の雌は便を貯めて排泄するため、総排泄腔内に留まっている時間が長いことが原因となっています。異臭がある糞便からは、クロストリジウムという細菌が検出されることが多く、この菌は鳥には無害でも、人の食中毒の原因になることがあるので注意が必要です。

上記のような異常な排泄物が見られたら、適切な診断と治療が必要です。小鳥は一日で状態がすぐに悪化することが多いです。早目にご来院下さい。

以下もご参照ください
No91小鳥の基本
No127小鳥の腹囲膨大


No.210 巣立ちビナ

5月から8月は、毎年様々な種類の野鳥のヒナが病院に持ち込まれます。当院ではスズメやヒヨドリが多いです。公園などに一羽でいる小さな姿はとても可哀そうに見えて、動物が好きな方は助けてあげたくなります。ところが、このヒナたちは『巣立ちビナ』の可能性があります。

巣立ちビナは親鳥がそばにいて、飛び方や餌の取り方、仲間とのコミュニケーション方法、外敵からの身の守り方などを学んでいます。社会勉強中なのです。ヒトが近くにいるために、親鳥は迎えに行けずに困っているかもしれません。近くに巣を発見出来たら、そっと戻してあげて立ち去ってください。また、もしその巣が壊れていたら、カップ麺の空き容器などを利用して、その中に壊れた巣を入れてガムテープなどで木に張り付けてあげて下さい。そうすると親鳥が鳴き声を聞きつけて餌をはこんできます。

怪我をしている時は保護が必要な場合もありますが、怪我や病気の場合でも、基本的に野鳥を飼育することは法律で禁止されています。以下の神奈川県のWebサイトも参照してください
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/f4y/05shoubyou/top.html


No.209 胸水(Pleural fluid)

体内の水分を代謝する機能に異常が発生したことにより、心臓や肺を包んでいる胸膜に漏れ出した体液を胸水といいます。
胸水は、さまざまな機能障害を起こします。腹水などでもいえることですが、体内の一部に集中的に水が溜まってしまうと、臓器が圧迫され極端な負荷がかかります。
肺周辺で水が溜まると、肺が圧迫されてしまい呼吸困難になります。あまり運動をしなくなり、今までずっと元気で普通に生活していたのに突然元気がなくなったように感じられます。また、下痢、食欲不振、舌が変色するなどの症状が出る事もあります。

胸水が溜まる原因ははっきりとはわかっていませんが、もともと胸腔内には少量のリンパ液と組織液が存在していて、呼吸運動によって生じる肺や心臓との摩擦を軽減しています。この微量の胸水は、静水圧、血漿膠質浸透圧、胸膜の血管透過性の三つによって絶妙なバランスの元で維持されています。このバランスが崩れた時に胸水が溜まります。また、リンパ管や血管の損傷によっても生じます。

1.静水圧の上昇:うっ血性心不全などの心膜疾患で起こります。
2.血漿膠質浸透圧の低下:血液中のアルブミン濃度の低下(低蛋白血症)で起こります。低蛋白血症は、重度の肝臓病や蛋白漏出性腸症、蛋白漏出性腎症などが原因になります。
3.胸膜の血管透過性の亢進:主に胸膜の炎症によって起こります。非化膿性の場合は、悪性腫瘍、猫伝染性腹膜炎(FIP)、肺葉捻転、横隔膜ヘルニアなどが原因です。化膿性の場合は細菌感染が原因で、特に猫に多いです。
4.リンパ管や血管の損傷:リンパ管が破ける乳び胸という病気が代表です。他にも、悪性腫瘍、フィラリア、原因不明の特発性によるものがあります。

胸水はX線検査、超音波検査などで容易に発見することができます。発見したら胸水を針で抜いて、見た目の状態、比重、総蛋白濃度(TP)、細胞数、含まれる細胞の顕微鏡での観察を行います。胸水の比重、総蛋白濃度、細胞数によって以下の3つに分類します。

比重、総蛋白(g/dl)、細胞数(/μl)
漏出液(<1.018、<2.5、<1500):心疾患、低タンパク血症
変性漏出液(>1.018、2.5-7.5、1000-7000):心疾患、悪性腫瘍、乳び胸、肺葉捻転
滲出液(>1.018、>3.0、>7000):悪性腫瘍、胸膜炎、膿胸、猫伝染性腹膜炎

胸水が溜まる疾患は重篤なものが多いです。早期に発見して適切な治療が必要です。


Np.208 難産(Difficult delivery)

日本人にとっては犬は安産だという認識があると思いますが、現代では都市伝説です。従来日本にいた犬種は比較的体が大きく(小型犬とされる柴犬でも5kg以上)、体型もお産に適していました。パグやブルドッグ、シーズーなどの短頭種、チワワやティーカップ・プードルなどの超小型犬種については、母犬の産道に比べて赤ちゃんの頭が大きく、難産になることがしばしばあります。また、胎児が病気だったり、お母さんが体調を崩していても難産になることがあります。

一般的に以下に当てはまる場合は、帝王切開になる場合があります。
・短頭種、超小型犬種
・予定日から10日過ぎても生まれない
・直腸温の低下後、24時間経過しても陣痛が起こらない
・強い陣痛が30分以上あるが産まれない。
・微弱で休息期の長い陣痛が4~6時間続く
・緑色の液体排出(胎盤剥離の徴候)
・二次破水から1時間たっても産まれない
・母犬が激しい痛みを示している

動物の帝王切開はヒトと違って全身麻酔が必要になり、リスクが伴います。麻酔薬が胎盤を通って赤ちゃんの体や脳に入るため、赤ちゃんはスリーピングベイビーと呼ばれる眠った状態、もしくは呼吸が弱くなって生まれてくる場合がほとんどです。母親や胎児の状態が悪くならないうちに適切に判断して行うことが必要です。