No.284 猫の副鼻腔炎

猫によくある疾患の1つに副鼻腔炎があります。鼻の奥にある空洞を副鼻腔といい、猫には鼻腔(鼻の内部)の上にある前頭洞、奥にある蝶形骨洞の2つがあり、ここに炎症を起こす事を副鼻腔炎といいます。副鼻腔の一部は鼻腔と繋がっているため、鼻腔内に炎症があると副鼻腔内に炎症が波及してしまうことがあります。鼻腔と副鼻腔の炎症は併発することも多いです。炎症の結果、副鼻腔に膿が溜まった状態を蓄膿症といいます。

症状は鼻水、くしゃみ、鼻づまり、呼吸困難、結膜炎や鼻炎が併発する場合もあります。原因の多くは、細菌や真菌、ウイルス感染(とくにヘルペスウイルス)による鼻炎からの感染・炎症の波及ですが、歯周病から口腔鼻腔瘻になり鼻炎、副鼻腔炎になる場合もあります。

治療は基礎疾患の治療、鼻炎の場合は鼻炎、歯周病が原因の場合は歯周病の治療が優先されます。また対症療法として、ネフライザー(吸入薬を入れて使用する吸入器)を使用したり、難治性の場合は外科的な対処が必要な場合もあります。とくに慢性化して頭蓋骨に感染や炎症が波及している場合や、持病があったり高齢などで免疫力が弱っている場合などは治療が困難となります。副鼻腔炎になる前、鼻炎や歯周病だけのうちに治療することが重要です。


副鼻腔炎の猫の鼻水

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No218 口腔鼻腔瘻


No.283 ウサギと野菜

ウサギにどんな野菜を与えたらよいのかよく質問を受けます。

与えてはいけない野菜の代表はユリ科の植物、ネギ類です。長ネギ、玉ねぎ、にんにく、ニラなどを食べると血液が壊され溶血性貧血を起こします。原因は血液を壊すアリルプロピルジスルファイドが含まれているからです。犬や猫、牛も同じです。猿は容量依存性、鳥では稀です。

また、ホウレンソウはアクやえぐみの成分のシュウ酸が入っているので避けた方が良いです。ホウレンソウはCaと結合して尿路結石を作りやすいです。尿路結石を作りやすいCaが多い野菜は、コマツナ、チンゲン菜、大根の葉、春菊、水菜、パセリなどです。少量なら問題ありません。

キャベツは文献によって評価がわかれている野菜です。理由はゴイトロゲンという甲状腺腫誘発物質が含まれているからです。実験動物のウサギで甲状腺腫が作られ、体重減少、低体温、心拍数の低下、免疫量の低下が報告されています。しかし、よほど食べ過ぎなければ問題ないと思います。

アボカドもペルシンという有毒物質が含まれているので避けた方が良いです。胃腸障害、肝不全、心臓のトラブルもあります。犬や鳥でも報告があります。

ウサギはビタミンAの欠乏症で、体重減少や成長障害、眼疾患(角膜ジストロフィー、網膜変性)、神経症状、不妊症、水頭症、スナッフル、腸炎などを起こすことがあるので、ビタミンAや体内でビタミンAに変化するβカロチンを含んでいる野菜を取ると良いです。サラダ菜、コマツナ、チンゲン菜、大根の葉、春菊、カボチャ、ホウレンソウ、パセリ、ニンジンなどに多く含まれています。ただしビタミンAは接取し過ぎると、体重減少、耳介軟骨変性、脱毛などが起こることがあるので注意が必要です。また、ペレットの酸化、質の悪い牧草、飢餓、腸炎、肝疾患などでもビタミンA欠乏が起こります。

これらのことを踏まえると無難な野菜は、サラダ菜、セロリ、ニンジン、ブロッコリーです。野草は、オオバコ、タンポポ、ハコベ、レンゲ、クローバー、ナズナ、桑の葉などがオススメです。農薬散布のないものを与えてください。また観葉植物は中毒を起こしやすいので与えない方が無難です。


ニンジンはウサギに良い野菜です


No.282 ウサギと牧草

ウサギは完全草食性です、牧草を常に与えて、ペレットと緑黄野菜は朝晩に与えると良いです。牧草:ペレット:緑黄野菜の比率は6:3:1ぐらいが理想です。

牧草はマメ科のアルファルファ、クローバー、イネ科のチモシー、イタリアングラス、オーチャードグラスなどがありますが、よく用いられているのはチモシーとアルファルファです。一般的にチモシーは成体向け、アルファルファは幼体・妊娠時向けですが、チモシーを幼体・妊娠時に、アルファルファを成体に与えていけないことはありません。また、一般的に生牧草は水分とビタミンAが豊富で、乾牧草は美味しくて香りがよく、ワラはビタミンやセルロース、リグニンが多く含まれていますが美味しくないといった特徴があります。

牧草の女王と呼ばれるアルファルファは肥満になるという話がありますが、そんなことはありません。ただし比較的Ca含有量が高いので多給すると尿路結石にはなりやすいです。また、蒸れた生のアルファルファは毒性を帯びるので注意が必要です。

チモシーは刈り取る次期によって、一番刈り、二番刈り、三番刈りに分かれます。
一番刈り:初夏のもので太くてしっかりしています。繊維質は一番多く含まれます。
二番刈り:夏~秋のもので細く柔らかいです。繊維質は一番刈りよりも少ないです。
三番刈り:初冬のものです。栄養価は一番低く繊維質も低いです。

ウサギが牧草を食べなくなった時の原因は大きく2つあります。
1.おいしくない:この場合は新鮮なものに変えるとか、牧草の種類を変えてみて下さい。三番刈りのチモシーは柔らかいし、イタリアングラスは甘いです。
2.歯がおかしい:この場合は動物病院で診てもらってください。

牧草は主食にも、おやつにも、おもちゃにもなります。ウサギにはバラエティーに富んだ牧草を与え、引っ張って食べるのも好きなので与え方に工夫をしてみて下さい。


No.281 ウサギの盲腸

ウサギの盲腸は壁の薄いコイル状の器官で右の腹腔を占め、胃の約10倍の大きさがあります。働きはビタミンB群・ビタミンKの合成や、血中尿素を利用した微生物発酵(嫌気的発酵)によってアミノ酸を合成し、VFA(揮発性脂肪酸)の合成・吸収も行います。エネルギー産生、腸内細菌叢の維持、水や電解質の吸収促進などにとても重要な臓器です。

ウサギはドロッとしたゼラチン状の膜に覆われたブドウの房状の盲腸便を1日に数回出して、1日に1~2回それを食べます(硬い便も食べます)。正確に言えば飲み込んでいます。盲腸便は胃体部で6~8時間かけて発酵し、乳酸(エネルギー)が生成され、ゼラチン状の膜が取れ小腸で吸収されます。このゼラチン状の膜は盲腸便を胃酸から守り消化・発酵を助けています。

肥満や高齢、病気などで、ウサギが食糞をできなくなった場合は体重が減少します。40日間の研究では、食事のカロリーを60%に減らしたくらいになると言われています。まだまだウサギの盲腸の研究はこれからたくさんの知見が出てくるでしょう。炎症が酷いと切られてしまうこともあるヒトの盲腸とは大きく違います。


ウサギの盲腸便


No.280 リンパ球形質細胞性腸炎 (LPE)と炎症性腸疾患 (IBD)

犬や猫、フェレットなどで、お腹を壊しやすく頻繁に下痢や嘔吐を繰り返すことがあります。食欲不振、嘔吐、下痢(軟便)、血便といった消化器症状の原因は実に様々です。食事の変更、気候・環境の変化、ストレスなどの一過性のものから、ある食材に対するアレルギー反応、腸内細菌叢の変化、感染症(ウイルス、細菌、寄生虫)、腫瘍、原因不明の特発性のものもあります。とくに原因不明の慢性的な消化器症状は、リンパ球形質細胞性腸炎(Lymphocytic plasmacytotic enteritis,LPE)炎症性腸疾患 (Inflammatory bowel disease,IBD)とも呼ばれています。ヒトではIBDは潰瘍性大腸炎やクローン病を示すのに対し、動物では『消化管粘膜の炎症性病変を特徴とする特発性で慢性の胃腸症候群』と定義されています。しかし獣医界ではLPEとIBDの定義はとても曖昧です。IBDの最も代表的な疾患がLPEと書かれている教科書があったり、LPEを除外してIBDを診断すると書かれているものもあります。

LPEやIBDの動物では、消化器症状の他、血中Albの低下、貧血、体重減少がよくみられます。診断には、レントゲン検査や超音波検査などをまず行い、腸の腫れなどを判定し疑いが強い場合、麻酔が必要になりますが内視鏡による腸細胞のバイオプシー検査や、試験開腹によって消化管前層生検をして、確定診断のための病理組織学検査を行います。慢性的な胃腸障害の犬猫、フェレットの病理組織学検査で1番よくみられるのはLPEで、次がIBDです。しかし消化管の病変は、しばしば分布や程度が文節的あるいは散在的で代表的な病変が生検標本に含まれない場合があります。そもそもLPEとIBD、腸のリンパ腫の区別は病理検査でも難しく、経過を見ることが重要で繰り返しの検査が必要な時もあります。

病気は同じ診断名がついても、簡単な治療ですぐよくなる場合とそうでない場合があります。LPEやIBDでも整腸剤や食事管理で簡単に軽快する場合と、抗生剤やステロイド剤、免疫抑制剤などが必要な場合があります。病理組織診断では、軽度、中等度、重度と記載されますがこれはあまりあてになりません。軽度でも難治性の場合や長期の投薬が必要になる場合もあります。とくに柴犬のIBDは予後が悪い傾向があります。治療に反応が悪い場合は繰り返しの検査を行い、リンパ腫などのさらに重篤な病気を見逃さないようにする必要があります。


リンパ球と形質細胞の浸潤がみられるLPEの犬の十二指腸の組織検査


No.279 犬の角膜血腫

犬の角膜血腫は血腫様血管新生とも呼ばれ、しばしば高齢の犬にみられる疾患です。角膜というのは本来は透明な組織であり、通常は血管は存在しません。しかしながら、何らかの要因により角膜に血管新生が起こります。これが角膜血腫です。はっきりとした病変の割には臨床症状に乏しく、眼の周囲の毛が長い犬の場合は、飼い主さんも気が付いていないことも珍しくありません。

少し古い2011年の研究では、10歳以上の雄に発生が多くみられるという報告がありますが、現在のところまだ原因は解明されてはいません。免疫異常、涙液の異常や、角膜上皮障害などの関与が疑われています。また、チワワやT.プードル、柴犬などの小型犬で多く、中型犬、大型犬ではあまりみられません。

症状は、角膜に突然1~数ヶ所の赤い血の塊が見えて、基本的に痛みはなく、涙液量などの一般眼科検査では明らかな異常はみられません。

治療はステロイドの点眼薬が著効を示すと言われていますが、他の眼の異常がなければ、何もしなくても2~3ヶ月で治癒することが多いです。角膜潰瘍やドライアイがあることもあるので、しっかりとした診断が必要です。

原因の解明がなされていないため、治療薬の評価なども含め、さらなる研究が待たれるところです。


T.プードルの角膜血腫


No.278 免疫介在性血小板減少性(Immune thrombocytopenia, ITP)

免疫介在性血小板減少症は、血小板の破壊と巨核球(骨髄内にある血小板の大元)、血小板産生の停止の両方を特徴とする自己免疫性疾患です。血小板に対する自己抗体(自分の細胞、組織に対して産生される抗体)がくっつき、特に脾臓において貪食され、結果として血小板が減少します。近年、この病態以外にも、リンパ球の一種であるT細胞が血小板破壊の中心的役割を果たしていることがわかってきました。ヒトのITP患者では制御性T細胞の数と機能が減っていることがいくつかの研究で証明され、犬においても研究が進んでいます。自己抗体が結合することで貪食されて起こる血小板破壊だけでなく、細胞障害性T細胞による血小板破壊もITPの病態と考えられ、さらには補体(病原微生物などの抗原を排除するための免疫反応を媒介するタンパク質)もまた、血小板や巨核球を破壊すると言われています。また、ヒトではピロリ菌の関与も証明されています。

血小板は血を止める作用があるので、発症すると内出血が増えます。このことから紫斑病とも呼ばれます。鼻出血や血尿、血便、歯茎からの出血などもみられることがあります。マルチーズ、シーズー、プードルに多いと言われています。

診断は、上記の症状と、血小板の減少、血液塗抹での血小板の数や形を顕微鏡によって観察して診断します、また、他の出血傾向を生じる病気がないかどうかを除外診断しながら絞り込んでいきます。ステロイドを使った治療的診断を行う事もあります。はっきりしないものや、薬に反応が悪い場合は骨髄検査も考慮します。

治療は、前回のIHAと同様に、自己抗体による悪い免疫反応を抑える治療を行います。最初は副腎皮質ホルモン剤を用いることが多いです。反応が悪い場合は、その他の薬を併用します。再発性、難治性の場合は脾臓の摘出が効果的な場合があります。さらにTPO製剤(血小板を作る細胞を刺激する薬)効果的と言われていますが動物での報告はまだ少ないです。通常は70-80%の動物が回復します。ただ、再発も多いので注意が必要です。また、IHAと同時にITPが起こるとをエバンス症候群と呼び、予後が悪いです。


ITPによる腹部の内出血

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No276 溶血性貧血
No277 自己免疫性溶血性貧血


No.277 自己免疫性溶血性貧血 (Immune hemolytic anemia,IHA)

自己免疫性溶血性貧血は、自分の赤血球に対する自己抗体(自分の細胞、組織に対して産生される抗体)が産生され、血管内や脾臓、肝臓骨髄内で免疫的機序により赤血球が破壊される疾患です。犬でよくみられ、プードルやマルチーズ、シーズー、コッカースパニエル、アイリッシュセッターでの発症が多いといわれています。♀の方が発症が多く、♂の2~4倍です。また、なぜか寒い時期に多い印象です。猫では猫白血病ウイルス(FeLV)の感染に関連してみられることが多く、性差、品種差はありません。原因も不明です。

症状は元気、食欲不振などの貧血の諸症状の他、発熱、血色素尿、黄疸、脾腫、肝腫などがみられます。

診断は、症状の他、赤血球に自己凝集(赤血球同士が結合してしまう反応)が認められることや、クームス試験(赤血球表面に抗体が付着しているかを証明する検査)、球状赤血球の出現などから行います。骨髄検査が行われる場合もあります。

治療は、自己抗体による悪い免疫反応を抑える治療を行います。最初は副腎皮質ホルモン剤を用いることが多いです。反応が悪い場合は、その他の薬を考慮します。再発性、難治性の場合は脾臓の摘出が効果的な場合があります。60%くらいの症例は回復しますが、重度の自己凝集や血色素尿がみられる場合、血小板減少を伴った場合は予後が悪いです。


自己凝集している赤血球

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No276 溶血性貧血


No.276 溶血性貧血 ( Hemolytic anemia)

溶血性貧血は、赤血球が正常の寿命より早く、血管内や脾臓、肝臓、骨髄内で破壊されることによる貧血です。この時、造血能は通常、正常か亢進しています。溶血性貧血は赤血球の破壊される場所によって、血管内溶血と血管外溶血に分けられます。血管内溶血は直接、補体(病原微生物などの抗原を排除するための免疫反応を媒介するタンパク質)やリンパ球によって赤血球が破壊されます。血管外溶血は肝臓や脾臓、骨髄組織内のマクロファージによって貪食されることによって赤血球が減少します。血管内溶血では、血色素尿、発熱、黄疸をみることがあります。溶血性貧血の原因は以下のようなものがあります。

・免疫介在性
赤血球を自分のものでないと体が認識してしまい自己抗体や補体などの免疫が関与して赤血球を破壊します。自己免疫性溶血性貧血、薬剤誘発性溶血性貧血、同種免疫性溶血性貧血(新生児溶血、不適合輸血)などがあります

・感染性
細菌やウイルス、原虫などの感染が原因です。主なものに、レプトスピラ、バベシア、ヘモプラズマなどがあります

・化学物質や毒性物質
玉ねぎ、DLメチオニン、アセトアミノフェン、メチレンブルー、プロピレングリコールなどによりハインツ小体性貧血やメトヘモグロビン血症がみられます

・機械的刺激
物理的作用により赤血球が破壊されます。大血管障害性溶血性貧血と細血管障害性溶血性貧血にわけられます。前者はフィラリア症の大静脈塞栓症や心臓弁膜症などにみられ、後者は播種性血管内凝固症候群(DIC)や尿毒性尿毒症症候群(HUS)など細い血管に微細な血栓が形成される疾患や、血管肉腫や播種性癌転移のような異常な細血管塊が形成されるような疾患でみられます

・先天的異常
ピルビン酸キナーゼ欠乏症、フォスフォラクトキナーゼ欠乏症、遺伝性口唇状赤血球増加少などの先天的酵素欠損や細胞膜の異常でみられます

・その他
有棘赤血球の増加、重度肝障害などでみられることがあります(Spur cell anemia)


No.275 外科手術用エネルギーデバイス

外科手術では、組織を切離(せつり=切り離すこと)するときに出血を防ぐことが重要です。従来は縫合糸が多く使用されていましたが、現在では、出血を防ぐための血管封止(ふうし=漏れたり流れ出たりしないように封をすること)と組織の切離が1本でできるデバイス(装置)が幅広く使われています。このデバイスは、組織を高温にすることでタンパク質の変性を促すことにより血管壁どうしをくっつけて封止し、その後で切離を行います。こうしたデバイスは、組織を高温にするために何らかのエネルギーを用いるので、一般に「エネルギーデバイス」と呼ばれます。現在多く使われているエネルギーデバイスには、高周波の電流を使うものと、超音波による振動を使うものの2種類があります。それぞれに利点が異なり、手術のタイプや場面によって使い分けられています。両者の特徴をご説明します。

高周波電流を使うデバイスの利点は、血管の封止能力が高いことです。「バイポーラ型」と呼ばれる高周波電流エネルギーデバイスでは、切除したい部分をデバイスの先端部で挟み、その間に高周波電流を流します。すると、組織を電気的な抵抗によって熱が発生し、組織の温度が上昇します。その結果、タンパク質が変性して血管が封止されます。しかし、温度上昇は100℃くらいで止まるので切断まではできません。この状態になったところで、ブレード(刃)を組織に走らせると、出血せずに切離できるというわけです。しっかりと血管を封止できるのが利点ですが、「電流を流す」→「切る」という2つの操作が必要になります。

一方、超音波振動を使ったデバイスは、血管を封止し、切離するまでを1つの操作でできるのが利点です。プローブと呼ばれる振動棒ともう1つの金属の棒とで組織を挟み、強力な超音波を発生させます。すると、プローブが高速に振動します。その摩擦熱で組織の温度が上昇してタンパク質が変性し、200℃くらいになると崩壊して、組織が切断されるのです。切断できるだけでなく、血管封止効果もあります。ただし、その封止能力は高周波電流エネルギーデバイスほどではありません。

オリンパス社が開発したサンダービート(Thunderbeat)は、この両者の利点を生かし、血管を高周波電流を使った時の様にしっかり封止して、超音波振動を使用した時の様に切離するという作業が一度に行えます。この方法の利点は、出血の防止の他にも、手術時間の短縮、縫合糸が必要でなくなるので縫合糸性肉芽腫の防止、また、術野が狭くてすむので腹腔鏡手術にも応用されています。

クリックすると手術時の写真が出ます。苦手な方は見ないで下さい。
サンダービートによる血管の封止・切断