No.303 ウサギのソアホック(足底潰瘍、飛節糜爛)

ウサギの足の裏には犬猫のようにクッションとなる肉球がなく代わりに豊富な被毛で覆われています。しかし、何らかの理由で足の裏の毛が失われると、大きなトラブルになってしまうことがあります。ソアホック(足底潰瘍、飛節糜爛)とはこの足底の皮膚におこる病変です。足の中央付近とかかとの部分は骨が皮膚に近いため床ずれのような状態が発生しやすくなっています。脱毛し軽度に赤く腫れる程度から、重度な潰瘍を起こし、出血や感染を起こす場合もあります。感染が骨や関節にまで波及すると、断脚が必要になったり、全身的な敗血症に陥り死にいたるケースもあります。

フローリングでの飼育やケージの底が硬すぎることが大きな要因になります。本来は自然界の土の上のようにデコボコした環境が好ましいと考えられています。しかし、多くの飼主さんがスノコで飼育されているのに、病気になる個体と平気な個体がいるので、床材だけが原因ではありません。床が湿っていて不衛生だったり、ケージが狭すぎて運動不足だったり、栄養を取りすぎて肥満になることも原因として挙げられます。また、爪が伸びすぎていたり、全身的な体調不良や栄養失調でも発症の危険性が高くなります。

治療の最初は、飼育環境の再確認です。衛生的な環境で発症したのであれば、更にクッション性を持たせる為に、牧草を敷き詰めたり、市販の休足マットを何枚かケージに使用します。足の裏に糞尿が着いてしまわないようにマメにスノコやトイレの掃除も必要です。ケージが狭い場合は大きめのものを用意したり、肥満がある場合では、イネ科の牧草(→No282ウサギと牧草)を主食にして自然なダイエットを行います。感染による炎症が疑われる場合、抗生物質や消炎剤の内服や、クッション性のあるガーゼやコットンを当てたテーピングを行う場合もあります。テーピングの際はウサギがテーピングを気にして齧って食べてしまう(誤食)の危険性もあるので注意します。エリザベスカラーが必要になる場合もあります。非常に治療に時間がかかる病気なので、早期発見の為に日頃から足裏のチェックをしてあげてください。


足底皮膚炎のウサギ


No.302 UW25 (Wisconsin-Madison Chemotherapy Protocol:ウィスコンシン-マジソン プロトコール)

低分化型(高悪性度)リンパ腫(→No202リンパ腫)は、現在の抗癌剤治療では根治させることは極めて難しく寛解を維持させることになります。

根治:すべての腫瘍細胞が根絶されている状態
寛解:詳細な検査を行っても病変が検出できない状態
腫瘍細胞が1g以下の状態(1g=10億個)

抗癌剤治療を行っていく中で、QOL(生活の質)の改善を考えることが非常に重要になります。抗癌剤を使うことで腫瘍細胞を抑え込めたとしても、副作用で苦しむ期間が長ければ良い治療とはいえません。低分化型(高悪性度)リンパ腫に対する抗癌剤治療は、1種類の抗癌剤だけではなく数種類の抗癌剤を組み合わせて使用する多剤併用療法を行います。この多剤併用療法を用いることで、効果を強くしたり副作用を弱くすることが可能となり患者のQOLの改善につながります。

リンパ腫と診断し、未治療の動物を寛解状態に導入するために行うのが導入療法です。最もよく使用するのがCHOPを基本骨格にした多剤併用療法です。CHOPとは使用する抗癌剤のアルファベットの頭文字を表記したものです。CHOPを基本骨格にした多剤併用療法のなかでも、ウィスコンシン大学で考案された25週のプロトコールUW25(Wisconsin-Madison Chemotherapy Protocol:ウィスコンシン-マジソン プロトコール)
は、奏効率、奏効期間、生存期間を統合して現時点では最も好成績なプロトコールです(実際には各治療施設ごとにアレンジして、患者さんごとにプロトコールを作っています)。治療期間は約6カ月、奏効率は約94%、奏効期間期間中央値は約10カ月、生存期間中央値は約14カ月です。

Cyclophosphamid:エンドキサン;シクロフォスファミド
DNAに結合して、細胞の分裂・増殖を抑制します。骨髄抑制、出血性膀胱炎に注意します。
投与後にチェックする症状
・嘔吐、食欲不振
・脱毛
・だるそうではないか
・血尿、頻尿

Hydroxydaunorubicin:アドリアシン;ドキソルビシン
強い抗癌作用を持ちます。DNAの複製に必要な酵素の働きを阻害します。容量依存で心臓が生涯される場合があります。猫やシェルティーでは腎毒性に注意します。
投与後にチェックする症状
・嘔吐、食欲不振
・脱毛
・だるそうではないか
・血尿、頻尿

Oncovin:オンコビン;ビンクリスチン
微小管と呼ばれる細胞内の器官の働きを阻害し、細胞の分裂・増殖を抑えます。リンパ腫の他、白血病にも使います。神経障害が出やすく、指が痺れたり、歩行がおかしくなる場合があります。
投与後にチェックする症状
・脱毛
・だるそうではないか
・排尿困難はないか
・歩行に問題はないか

Prednisolone:プレドニン;プレドニゾロン
プレドニンは抗癌剤ではなく合成副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)です。本来はアレルギーや炎症を抑える薬として使われます。抗癌剤ではありませんが、リンパ腫の治療に使用されます。食欲増進作用も期待できます。

L-アスパラギナーゼ;ロイナーゼ
CHOPとは違いますが、治療がうまく行かない場合や、リンパ腫が再燃してしまった場合に使用します。腫瘍細胞が増殖するときに必要なアミノ酸の一種であるアスパラギンを分解し、栄養不足を引き起こして死滅させる作用を利用した抗癌剤です。単独使用でも功を奏する場合がありますが、腫瘍細胞がL-アスパラギナーゼに耐性を持つスピードはとても早いとされているため、その後の治療が重要となります。比較的副作用は少ないですが、繰り返し投与でアナフィラキシーを起こすことがあります。


UW25のプロトコールの1例(日本小動物がんセンター)


No301 慢性腎不全(CKD)の推奨される治療

CKDのステージ毎の推奨される治療法です。ステージ分類は前回(→No300慢性腎不全のステージ分類)をご参照下さい。

ステージ1
・腎毒性のある薬は注意して使用
・腎前性(心疾患など)、腎後性(尿路結石など)の異常に対処
・新鮮な水を常に飲めるようにする
・クレアチニン、SDMAの変化をモニター
・原因または併発疾患の特定と治療
・収縮期血圧が>160または標的臓器に障害がある場合は高血圧の治療(→No259高血圧)
・持続的タンパク尿を呈する場合(犬>0.5 猫>0.4)、腎臓療法食と投薬
・血中リンを<4.6mg/dLに維持
・必要に応じ、腎臓療法食とリン吸着薬を使用

ステージ2
・ステージ1に準ずる
・腎臓療法食
・低カリウム血症の治療(猫)

ステージ3
・ステージ2に準ずる
・血中リンを<5.0mg/dLに維持
・代謝性アシドーシスの治療
・貧血の治療を検討
・嘔吐、食欲不振、悪心の治療
・必要に応じ、経腸または皮下補液による水和状態の維持(→No262皮下点滴の方法)
・カルシトリオール(活性型ビタミンD3製剤)による治療を検討(犬)

ステージ4
・ステージ3に準ずる
・リンを<6.0mg/dLに維持
・栄養および水和のサポートと投薬を容易にするための栄養チューブを検討

当たり前ですが、ステージが上がると治療も増えて大変です。早期発見のため、元気そうに見えても、8~10歳くらいまでは年に1回、10歳を超えたら、年に2回の定期検診がオススメです。


No.300 慢性腎不全(CKD)のステージ分類

CKDの臨床症状は、初期には無症状のことがあり、病気が進行すると、多飲多尿、体重減少、食欲不振、元気消失、脱水、嘔吐、口臭などが現れてきます。国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の最新慢性腎臓病ガイドラインとして、従来の1.クレアチニン 2.血圧 3.尿中タンパククレアチニン比(UPC)に、「クレアチニンよりも感度の高い腎機能マーカーである可能性がある」として、SDMA(→No299SDMA)が採用され、ステージ分類が変わりました。

クレアチニン(Creatinine:Cr)は、筋肉で作られる老廃物の一つで、そのほとんどが腎臓の糸球体から排泄されます。そのため、血液中のクレアチニンの増加は、糸球体の濾過機能が低下していることを意味します。ただし、筋肉が多い動物は高めに、筋肉が少ない動物は低めになるために、とくに筋肉質の大型の猫では高値になりやすい傾向があります。これだけでは正確性に乏しい検査です。

具体的なCKDのステージ分類は以下の検査で行います。

ステージ1および2前期を診断
1~4の1つ以上を満たす
1.腎前性要因(心疾患など)のない参考基準値内でのクレアチニンまたはSDMAの上昇
2.持続的なSDMAの上昇(>14μg/dL)
3.エコー画像上の腎臓の異常
4.持続的な腎性タンパク尿(UPC):犬>0.5 猫>0.4

より進行したCKDの診断(ステージ2後期-4)
1と2の両方を満たす
1.クレアチニンおよびSDMAの高値
2.尿比重:犬<1.030 猫<1.035

犬の慢性腎臓病のステージング

猫の慢性腎臓病のステージング

CKDと診断し、IRISガイドラインに従ってステージ化した後は、サブ分類をすることが重要です。動物では、蛋白尿と血圧から判断するサブ分類を用います。

蛋白尿をサブ分類する目的は、腎後性(尿路結石など)または腎前性(心疾患など)の可能性を除外することにより蛋白尿が腎性であることを明確にすることにあります。具体的には、 尿タンパククレアチニン比(UPC)を測定します。UPCは腎臓から蛋白の喪失を測定するもので、尿濃度の影響を受けません。蛋白尿を検出し、その継続性と規模を測定することは、臨床上の判断と患者の治療に対する反応を経過観察する上で重要です。UPCの正常値は犬で0.5未満、猫で0.2未満ですが、猫の慢性腎臓病CKDでは、タンパク漏出は起こりくいと考えられるため、UPCが0.2以上の症例では治療を行うことが推奨されています。

全身性高血圧はCKDの一般的な合併症です。高血圧が管理されていない場合、ネフロン機能の低下を引き起こし、疾患はより急速に進行するおそれがあります。したがって、高血圧の管理は治療上で重要です。(→No259高血圧)


No.299 SDMA (対称性ジメチルアルギニン)

SDMA (対称性ジメチルアルギニン)は、アミノ酸の1つであるアルギニンが腎臓でメチル化されできる代謝物です。SDMAの血中濃度の上昇は、心血管疾患、腎疾患のリスク上昇と関連していることが報告されていて、腎機能のバイオマーカー(ある疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のこと。 生物指標化合物ともいいます)となることもわかっています。近年、獣医療においても、慢性腎臓病(CKD、→No55慢性腎臓病1No56慢性腎臓病2)の早期発見の検査にSDMAが使われて出しました。比較的新しい検査ですが測定機会は非常に多くなって来ています。また、CKDのステージ分類にも変更がありました。

SDMAには3つの特徴があります。

1.糸球体濾過率(GFR、腎機能を表す値)の優れた指標となる腎機能バイオマーカーである

2.慢性腎臓病においてクレアチニンよりも早期に上昇する(SDMAは腎機能が40%喪失した時点で上昇するのに対し、クレアチニンは75%喪失するまで上昇しない)

3.筋肉量の影響を受けるクレアチニンと比較して腎機能に特異的→SDMAは筋肉量の影響を受けない(クレアチニンは、筋肉が多い動物では高値になりやすい検査です)

SDMAを測定することにより、CKDを早期発見し、処方食やサプリメント、代替医療などによって、CKDの進行を遅くすることが可能です。CKDも症状が出てから検査する時代から、定期的な健康診断で病気を早期に発見し予防する時代となりました。ある程度の年齢(犬7-8歳、猫6-7歳)になったら、元気そうに見えても年に1-2回の定期健診をして、SDMAを測定することがオススメです。とくに猫ちゃんは高率に腎疾患にかかるので、半年毎くらいの検査が推奨されますCKDの特徴的な症状である多飲多尿や食欲不振、嘔吐、削痩などがなくても、SDMAが14以上あった場合は症状がなくても何らかの治療を開始するのがオススメです。


No.298 NT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)

心臓を評価する血液検査はあまり良いものがありませんでしたが、近年、NT-proBNP という、心臓の異常を確認する血液マーカーがよく用いられます。NT-proBNPはBNPという物質がつくられるときに同時に合成される副産物です。BNPは心室壁から放出されるホルモンで、血圧を下げて心臓への負荷を減らす効果があります。心疾患が進行するとこのBNPが大量に放出されます。すなわち、NT-proBNPが高値 → BNPが高値 → 心疾患が進行している。となります。NT-proBNPの参考基準値は犬で900pmol/L以下、猫で100pmol/L以下です(ヒトでは400 pmol/L以下が目安です)。高いか低いかだけになりますが、現在、猫では院内で迅速に検査が可能です。犬は外注になります。

NT-proBNPは、心雑音が聴取される、心疾患になりやすい品種、元気や食欲が不安定、高齢、咳をしたり苦しそうにすることがある、などという場合に検査項目に含めます。とくに猫ちゃんでは心臓病があっても心雑音が聞こえないこともあり、健康そうに見える猫のうち16%に、この検査によって心臓病が発見されたというアメリカの報告があります。

もちろん、NT-proBNPだけで心疾患や心不全の有る無しは判断できません。品種、年齢、既往症、レントゲン検査、超音波検査や心電図、血圧測定や他の血液検査などを併せて総合的に診断します。早期発見のためには定期健診が重要です。


NT-proBNPの院内キット


No.297 ウーパールーパーの腹水症

ウーパールーパーは両生類の一種で、本来は中南米にあるメキシコ合衆国のソチミル湖やチャルコ湖という場所に住んでいましたが、 およそ150年前にヨーロッパに持ち出され、100年ほど前から医学の研究のために飼育され始めました。アホロートルとかメキシコサラマンダーとも呼ばれます。ウーパールーパーには驚異的な再生能力があり、手足の欠損はもちろん、脳の一部さえも再生可能です。

しかし、難しい疾患もあります。腹水症は体内に液体がたまり、水底から浮かんでこなくなる病気で、放っておくと衰弱して死に至ります。症状は水底にうずくまって、食欲、元気がなくなります。初期はわかりにくいですが、症状が進むにつれて腹部を中心にカラダ全体が異常に膨れ上がっていきます。

腹水の原因としては、細菌、ウィルス感染、心臓や腎臓、肝臓などの内臓疾患、体腔内の腫瘍などが挙げられます。とくに肝疾患、感染症が多いです。治療は、原因疾患の治療と、たまった腹水を抜く処置を行います。一般的には注射器で腹水を吸引しますが、一度に腹水を抜くとショック症状で死に至る場合があるため注意深く行います。

ウーパールーパーに少しずつお腹が膨らむ症状がみられたら、早目に動物病院で診察を受けて下さい。針で腹水を抜く以外にもウーパールーパーを体液に近い両生類用リンゲル液に浸し、浸透圧を利用して腹水を抜く方法をとる場合もあります。治療が難しい病気ですが、診察により原因を特定することができた場合は、完治出来ることもあります。


腹水症のウーパールーパー


No.296 生検

生検とは『生体検査』を略した言葉で、生きた体を検査するという意味です。体表や体内にしこりを発見した場合、そのしこりが腫瘍であるのかどうか、腫瘍であれば良性なのか悪性なのかを調べていく必要があります。品種、年齢、発生部位、形態、発生時期などを考慮しつつ検査を進めていくことになります。腫瘍が疑われる場合には正体を明確にするために、通常は生検を行います。生検とは、患部の一部を針やメスなどで切り取って、細胞を染色し顕微鏡などで詳しく調べる検査です。生検には次の3通りがあります。

1.針生検(FNA):しこりに針を刺してその細胞を採取し、染色して調べる方法です。肥満細胞腫(→No199肥満細胞腫)のようにこれで診断できる腫瘍もありますが、通常は大体のあたりを付けるものです。
2.コア生検(ツルーカット):針よりも太い生検用の器材を用い、ある程度の量の組織を採取する方法です。診断の他にも、手術が必要と思われる場合その切除範囲を決定したり、手術で取りきれないと思われる部位の抗癌剤の選択などのために用います。採取した材料は病理検査を依頼し、確定診断を行います。ただ、どうしても採取する量が少ないために確定が得られない場合もあります。全身麻酔が必要な事が多いです。
3.切除生検(組織生検):手術で切除した腫瘍を病理検査で確定する方法です。乳腺腫瘍、肺腫瘍など上記の方法で良性、悪性の判断ができないものや、また切除した腫瘍がきちんと取りきれているかの判断を行う時などに用います。通常、全身麻酔が必要です。


針生検(FNA)


No.295 ハリネズミの脱髄性麻痺 (Wobbly Hedgehog Syndorome:WHS)

 ハリネズミの脱髄性麻痺は原因不明の脱髄性神経病変により、進行性の運動失調を特徴とするハリネズミ特有の病気です。プルプル症候群とかふらつき症候群などとも呼ばれます。2歳以下での発症が多いですが何歳でもみられます。

神経細胞の一部分が突起状に伸びて、脳の情報を信号のように伝える電線のような働きをするのが軸索です。軸索はミエリン(髄鞘)と呼ばれる電線のカバーのようなものに覆われていて、このミエリンの存在のために脳の情報を正常に伝えることが出来ます。何らかの原因でミエリンが障害され、軸索がむき出しになる状態を脱髄と呼びます。

はっきりとした原因は不明ですが、栄養不良、ビタミン不足(とくにビタミンB1欠乏)、母親の母乳をしっかり飲めなかった、ウイルス、細菌、ストレス、遺伝などが考えられています。

通常、運動失調は後肢から始まり、発症初期は丸まりにくくなったり、つまずく事が多くなったりします。進行すると前肢にも症状が出て、食欲不振や削痩がみられ死にいたります。

診断は、症状や神経学的検査の他、血液検査、レントゲン検査、状況によってCT検査やMRI検査をして、他の脳神経疾患、リンパ腫、白血病、低血糖、低Ca血症、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、事故や外傷などと鑑別しますが、確定診断は、今のところ死後の解剖で脳や脊髄の病理所見を確認するしかありません。また、CTとMRIは、実施できる施設の問題、エキゾチックペットに対する麻酔の問題(→No241エキゾチックペットへの全身麻酔)、金銭的理由もありハードルは高いです。

治療は症状に合わせて、鎮痛剤、ステロイド剤、ビタミン剤、半導体レーザー、代替医療などを組み合わせて行いますが、原因が特定されていないため改善する場合とそうでない場合があります。食欲の低下がみられる場合は皮下点滴や強制給仕なども必要です。飼育環境の整備も重要です。なかなか治療が難しい病気の1つです。

WHSで後肢が麻痺したハリネズミ


No.294 精巣腫瘍

精巣腫瘍は去勢をしていない雄において比較的多くみられる腫瘍です。犬とウサギによくみられ、猫では稀です。特に、生後に陰嚢内に精巣が降りてきていない停留精巣の犬においては、正常に精巣下降した場合と比べて精巣腫瘍になるリスクが高いと言われています。また、精巣腫瘍は主にセルトリ細胞腫、精上皮腫(セミノーマ)、間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)と呼ばれる3種類の腫瘍に分類され、それらはほぼ同じ割合で発生し精巣腫瘍のほとんどを占めます。

セルトリ細胞腫:セルトリ細胞腫の犬の30%において高エストロゲン血症に伴う雌性化した乳房や左右対称性の脱毛などが特徴的な身体検査所見として認められます。また、血液検査において好中球減少、血小板減少、再生不良性貧血などを認める場合もあります。セルトリ細胞腫は、通常は良性の挙動を示し転移は稀(15%以下)とされていますが、肝臓や肺、リンパ節等へ転移することもあります。

精上皮腫(セミノーマ):セミノーマは潜在精巣において認められることが多く、セルトリ細胞腫と同様に高エストロゲン血症に伴う症状が認められる場合もあります。転移は稀ですが、リンパ節や肺への転移することがあります。

間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫):間質細胞腫の多くは1cm以下の結節性の病変であり臨床的に問題とされていない精巣において偶発的に発見されることが多い腫瘍です。高エストロゲン血症に伴う症状はセルトリ細胞腫やセミノーマに比べると少なく、転移することは極めて稀です。

診断には視診、触診の他、超音波検査を用いた精巣腫瘤の確認が必要であり、針吸引による細胞診検査によって暫定的に診断が行えますが、確定診断には病理組織学的な評価が必要となります。また、外科的な手術の前には、転移の有無や全身状態を確認するための血液検査やレントゲン検査、また場合によってはCT検査を行う必要があります。

治療は腫瘍の外科的摘出が第一選択となります。精巣腫瘍は転移の可能性が少なく、去勢手術によって大半は治癒します。しかし、稀に転移が認められる症例もあり、そのような症例は精巣に加えて転移部位の外科的切除も考慮し、追加の放射線治療や化学療法による治療を必要とする場合があります。また、再生不良性貧血を呈した場合は輸血等の対症療法以外に有効な治療法はありません。


ウサギの精巣腫瘍