No.313 逆くしゃみ (Reverse sneeze)

犬や猫が突然に息を何度も吸い込みながら、フガフガと鼻を鳴らす動作のことを「逆くしゃみ」と言います(発作性呼吸とも言います)。くしゃみはクシュンと鼻から外に息を出しますが、逆くしゃみはその逆で、吸い込みながら鼻を鳴らします。通常のくしゃみの前にはお腹が膨らみますが、逆くしゃみの場合にはお腹が膨らみません。原因ははっきりとしていませんが、鼻の奥の筋肉のたるみや鼻孔の狭さ、各種のアレルギー疾患などが関係していると言われています。

逆くしゃみは小型犬の短頭種によくみられる症状です。代表的な犬種としてはチワワ、フレンチ・ブルドック、パグ、シーズー、ペキニーズ、トイプードルなどがあげられますが、その他の犬種でもみられます。犬や猫が突然喘息のように苦しそうな呼吸をはじめるため、命に関わる問題ではないのかと心配になるかもしれませんが、実際に呼吸が苦しいことはほとんどありません。たいていは数秒~1分以内にはおさまり、犬や猫は何事もなかったかのようになります。

ただし、逆くしゃみの回数が増えて来たり、時間が長くなって来た場合は、前述のアレルギー疾患の他、鼻炎や異物、ウイルスや細菌、真菌の感染症など、何らかの鼻や咽頭部の病気の可能性が考えられるのでご相談下さい。とくに副鼻腔炎にしてしまうととてもやっかいです(→No312 副鼻腔炎)。逆くしゃみの様子を動画で撮影しておき、見せていただけると診断がスムーズです。


No.312 副鼻腔炎 (Sinusitis)

鼻の内部を鼻腔といいます。鼻腔は中央にある鼻中隔と呼ばれる仕切りで左右に分かれ、その外壁には鼻甲介という凹凸のあるトンネルになっています。 鼻腔周囲の顔の骨には副鼻腔という空洞があり、前頭洞(額の裏側)、篩骨洞(鼻の間)、上顎洞(頬の裏側)、蝶形骨洞(鼻の奥)と呼ばれています(猫は前頭洞、蝶形骨洞)。副鼻腔は小さな自然穴で鼻腔と交通しています。副鼻腔は粘膜が鼻汁(鼻水)を作るほか、顔面の骨と頭蓋骨の重量を減らしつつ、骨の強度と形を維持させ、顔面への衝撃を吸収しています。また、鼻と副鼻腔の空洞部分は、鳴き声に響きを加えています。

副鼻腔炎は、様々な鼻腔疾患の炎症が副鼻腔の粘膜に波及する起こることで発症します。また、鼻腔で炎症が起きると、鼻の粘膜が腫れたり、粘り気のある鼻水が出てきます。この腫れや鼻水によって、副鼻腔と鼻の間の自然穴がふさがると、副鼻腔から分泌物や異物を排泄できなくなり悪化します。こうして起こるのが副鼻腔炎です。猫は上部気道感染症を慢性化させるとなりやすいです。

主な犬の鼻腔疾患
1.慢性鼻炎(23.7%)
2.腫瘍(15%)
3.真菌、口蓋裂(8.7%)
5.歯根膿瘍(4%)
6.寄生虫(イヌハイダニ)、異物、原発性細菌感染(1.3%)

猫の上部気道感染症:猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス、クラミジア、マイコプラズマ、ボルデテラ
主な猫の鼻腔疾患(上部気道感染症除く)
1.腫瘍(39%)
2.慢性鼻炎(35%)
3.異物(10%)
4.鼻咽頭狭窄(6.5%)
5.原発性細菌感染、鼻ポリープ、外鼻腔狭窄(2.6%)
8.外傷(1.7%)

いずれも最初の症状は鼻水や鼻づまり、くしゃみ、目脂、臭いもわかり辛くなります。酷くなると呼吸困難、食欲不振、眼周囲の腫れなども伴います。原因にもよりますが副鼻腔炎になってしまうと治療が大変困難です。診断は、病歴、症状、鼻汁の培養検査、麻酔下でのレントゲン、CT、MRI、鼻腔鏡などが必要な場合もあります。鼻水やくしゃみが続くようなら早目に原因を追究して、適切な診断・治療が必要です。


副鼻腔炎の猫


No.311 齧歯類と爬虫類の膿瘍

ウサギ、ハムスター、ジリス、モルモット、チンチラ、デグーなどのげっ歯類や、亀やトカゲなどの爬虫類では、皮下に膿が出来ると犬や猫と違い、膿が拡散するのを防ぐためにカプセルの様に膿を皮下組織で封じ込めて嚢を作ります。これを皮下膿瘍といいます。膿はチーズ様で固く、膿の固さとカプセルのため、犬や猫よりも膿の洗浄の効果が低く、注射や飲み薬などの薬も効きにくいです。またどんどん大きくなるため、場所によっては生活にも支障が出てきます。

尖った牧草を刺してしまったとかの外傷や咬傷などからが多いですが、歯牙疾患による歯根の感染(→No135ウサギの不正咬合)によるもの、ソアホック(→No303ウサギのソアホック)から、爬虫類だと中耳炎からも発生します。

治療は、抗生剤の全身投与を行うとともに膿瘍を切開して排膿・洗浄しますが、外科的に嚢ごと摘出するのが早期治療につながります。しかし原因が改善されな場合は根治が難しいです。とくに、齧歯類でよくみられる、歯牙疾患からの歯根の感染が原因の場合、膿瘍は骨を融解しながら進行し、病巣が骨にも及んで来るため治癒率が著しく低くなってしまいます。病巣が骨と遊離している場合も慎重な治療が必要となります。また、膿を放置するとDIC(→No144 播種性血管内凝固症候群)の状態になって命にかかわる場合があります。早期に発見して適切な治療が必要です。


頬の皮下膿瘍のモルモット


No.310 知育トイ

知育トイは、噛んだり引っ張ったりするロープやぬいぐるみなどの一般的なおもちゃとは違い頭を使うおもちゃのことです。頭を使わせることにより、しつけの効果を上げたり、退屈防止、早食いの防止、肥満や問題行動の予防・治療に用いられます。例えば、転がすなど、ある工夫をするとおやつが食べれるような知育トイは、ただ単におやつをあげる場合と違い考える力が身に付きます。種類によって難易度も違うので、ステップアップさせることが可能です。また、知育トイは若い動物のものだけではなく、老齢の動物でも認知症の進行を遅らせるためにも使用します。

最初は難易度の低い知育トイから与えましょう。転がして遊ぶタイプや、舐めたり齧ったりして遊ぶタイプは比較的簡単です。簡単なタイプに慣れてきたら、倒したり引っ掻いたりするような難しいものへ徐々にレベルを上げていってください。

ペットショップやインターネットで多くの種類の知育トイが販売されています。目的によって変えてみて下さい。例として
早食い防止:食べづらい食器、食事やおやつを中に入れられるもの
しつけや考える力を養う:難易度の高いゲーム感覚で遊ぶもの
暇つぶし:動物の興味をそそるもの

購入するのみでなく、手作りや環境を使うなどをして工夫してみて下さい。早食い防止には、部屋の中に4-5カ所くらいご飯を隠して探させながら食べてもらうのも良いです。犬も猫も鼻を使うと疲れます。また、自分で見つけたごはんには満足感があります。ガチャガチャの中身を取り出しておやつが通るくらいの穴をあけて与えるのもオススメです。犬も猫も頭が良いので、同じ知育トイばかりだとすぐに飽きてしまいます。複数個用意して、例えば曜日によって変えるなどをしてみて下さい。

飲み込める大きさの知育トイは与えないようにして下さい。食道に詰まる事故につながります。動物の大きさにあったものを使いましょう。各自に合ったツボにはまる知育トイ・遊び方を探してください。


No.309 デグーの4大疾患

デグーはモルモットやチンチラと似た齧歯類で、頭がよく(ヒトの3歳児程度の知能があるといわれています)、好奇心旺盛で人によく慣れ、仕草も可愛いので、近年人気が上がっている動物です。

デグーによくある疾患が4つあります。

1.自咬症:社会性が強いデグーは家族から離される時期が早かったり、1頭飼いだったり、飼育環境が良くなかったりすると、尾や陰部、手足などを齧ってしまう自咬症を起こすことがあります。飼育環境の見直し、ヒトが家族の代わりになって遊ぶ時間を増やしたり、知育トイなどを上手く利用してストレスの軽減をすることが大事です。

2.尾抜け(Slit tail)
デグーは野性下で天敵に襲われた時に尾を切って逃げることがあります。飼育下でも尾を引っ張ると尾の皮膚が抜けてしまうことがあります。通常2-3週間で皮膚が剥がれてしまった尾の部分は壊死をして落ち着きますが、外科手術が必要な場合もあります。

3.不整咬合
デグーの歯は切歯も臼歯も常生歯で一生伸び続けます。金属のケージなどを齧り過ぎると歯の噛み合わせが悪くなり、食欲不振となり、酷くなると、呼吸や眼にも障害がでます。歯が失活してしまう場合もあります(この原因はよくわかっていません)。治療は麻酔下での処置が必要な場合が多く、病態の詳細な把握にはCT検査が必要な場合があります。

4.糖尿病
デグーはインスリン活性が低く(犬の1-10%)糖尿病になりやすい動物です。肥満も原因となります。糖尿病になると白内障を発症します。果物などの甘いものは与えない方が良いです。治療は経口糖降下剤を与えます。


No.308 突発性攻撃行動

突発性攻撃行動とは、犬や猫が何の前触れもなく突発的にいきなり襲い掛かってくる攻撃行動のことです。特発的とは原因不明という意味です。90年代後半、イギリスで動物の行動治療をしている獣医師が、飼主さんに対して激しい攻撃を繰り返していたスプリンガー・スパニエルを診断したとのが最初だそうです。国内でも発症した犬が確認されています。ここ数年、猫でも見られることがわかってきました。しかし、まだ研究が進んでおらず症例も少ないため不明な点が多いとされています。激怒症候群、レイジ・シンドロームなの俗称で呼ばれる場合もあります。

不安や恐怖から発症する場合が多いとされていますが、犬に関する研究では、脳神経系の異常であるてんかん(→No89癲癇、てんかん)の発作により、激しい攻撃行動が起こっている可能性が高いとの報告があります。そのことから、猫に関しても原因のひとつとして、てんかんが関わっているのではないかと考えられています。

突発性攻撃行動を起こすと、人や他の動物に対していきなり制御できないほどの激しい攻撃を加えます。本気で噛んだり引っかいたりするため、大きなケガにつながるおそれがあります。最初の症状が出るのは、犬の場合は3才までがほとんどで、早いと1才未満で発症する場合もあります。猫の場合も同様で、比較的若い時期から起こりやすいと考えられていますが高齢でもみられることがあります。

詳細なコンサルティングと各種の検査を行い、痛みや他の問題行動(恐怖や防御性の攻撃行動など)を除外して診断を行います。脳疾患を除外するためにMRI検査が必要な場合もあります。突発性攻撃行動の可能性が高いと診断した場合は、恐怖や不安を抑えるため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や抗てんかん薬が処方されます。定期的に受診していただき注意深く経過をみながらコントロールしていくことになります。


No.307 R-R変動率 (CVR-R)

R-R変動率とは心電図(→No306心電図検査)によって自律神経の機能の異常を調べる検査です。自律神経とは、意思とは関係なく無意識のうちに働く神経で、胃や腸の働き、心臓の拍動、代謝や体温の調節など、動物が生命を保つうえで欠かせない働きを担っています。自律神経は、正反対の働きをする「交感神経」と「副交感神経(迷走神経)」に分けられます。交感神経は活動時、緊張したとき、ストレスがかかったときなどに働き、副交感神経は、休息時、睡眠時、リラックスしたときなどに働きます。ヒトでは特に糖尿病の患者さんに多くみられる自律神経の機能障害の程度を検査するために多く用いられます。

心臓も自律神経にコントロールされており、息を吸うときは交感神経の働きで心拍が速くなります。逆に息を吐くときは副交感神経の働きで心拍がゆっくりになります。これを呼吸性不整脈といい、自然な現象です。

この差を数値化したものがR-R変動率で、自律神経の異常が分かる検査方法です。R-R変動率が0%に近づくと、自律神経による心臓のコントロールが失われている状況で、死亡率が高まります。

6%以上:正常
1.00~1.99%:予後不良
0.00~0.99%:1週間以内死亡率 80%
※認知症や交通事故によるショック状態では例外です
猫は参考値です。正常でも低い数値になることがあります


No.306 心電図検査 (Electrocardiogram;ECG)

心電図検査は、血液検査やレントゲン検査とならび、診察や健康診断の際に行われる頻度が高い一般的な検査です。心電図は心臓の異常を発見するためにとても有用な検査でありますが、心電図検査だけでは見つけることが難しい心臓病もあります。心電図は1903年にオランダの医学者アイントーベンによって考案されました。アイントーベンはその功績により1924年ノーベル医学生理学賞を授与されています。心電図検査は、当時のノーベル賞の受賞理由になりうる画期的な発見だったのです。そして100年近く経った現在でも使用されている素晴らしい検査です。

心臓は拍動すると同時に電気が流れているのですが、その電気興奮を波形として記録したものが心電図になります。現在、病院で行われる心電図検査は12誘導心電図といい、1枚の心電図記録には12種類の波形が記録されます。12種類もの波形を記録する理由は、心臓を流れる電気興奮を12の方向から観察し、全体像をしっかりと把握するためになります。

獣医学は日進月歩で様々な技術が開発されていますが、心電図検査が現在でも重宝されている理由は、動物に大きな負担をかけることなく実施することが可能で、すぐに波形記録を確認でき、得られる情報量が多いからということになると思います。しかし聴診器のみの診察では限界があるように、心電図検査のみでは心臓の状態や病気のことが全てわかるわけではありません。

血液検査ではその結果は数字となって表現されますが、心電図検査では波形が記録されます。心電図には、正常波形とされている波形記録があり、それに当てはまらなければ異常と判定されることになるわけです。しかし、正常波形ならば心臓に病気がなく、異常波形は心臓に病気を抱えている、と必ずしもなるわけではありません。

心臓は規則正しく動いていますが、それは心臓で規則的に電気が発生して流れているからです。心臓の規則正しさが乱れる不整脈(→No137不整脈)の診断は、心電図検査の最も得意とする領域になります。ヒトで多い「心筋梗塞」や「狭心症発作」のときには、心臓の電気的活動に異常が生じるので異常波形が出現します。また、猫でよくみられる「心筋症(→No222猫の肥大型心筋症)」という心筋に障害が起きている疾患でも異常波形が記録されることが多くなります。

しかし、犬でよくみられる、弁という心臓内の構造物の働きが悪くなっている弁膜症(→No194僧房弁閉鎖不全症)では、だいぶ進行してからでないと心電図波形は変化してこないことが一般的です。また、狭心症や不整脈などでは発作が起こったときでないと心電図波形に変化がみられないこともありますので、測定時の心電図が正常だからといって心臓病がないとは言い切れません。

逆に、健診結果で異常と判定された波形であっても、最終的に「問題なし」や「経過観察」と判断されるケース(病気とは言えず、治療の必要性なし)も結構あります。例えば、心臓の基本的な働き(全身に血液を送るポンプ機能)は正常で、突然死を起こす可能性は高くないと判断しうるのであれば、正常とはやや異なる電気興奮をしていたとしても、そのケースでは「問題なし」「経過観察」という結論になることがあります。

発作時の心電図記録が有用だと考えられるケースでは、運動負荷心電図や24時間心電図(ホルター心電図)といった特殊な心電図検査を行います。心臓の形態やポンプ機能を確認するためには、心電図よりも心臓超音波検査(→No154超音波検査)が有用になります。


No.305 血糖値

血糖値は糖尿病や低血糖などが疑われるときに測定します。動物で血糖値が上がる(高血糖)原因として代表的な疾患は糖尿病(→No304糖尿病)ですが、その他にもグルココルチコイド製剤など薬剤による高血糖、クッシング症候群(→No.79 犬の副腎皮質機能亢進症)、さらに膵炎(→No189膵炎)などが挙げられます。ウサギなどでは、痛みで高血糖になる場合があります。

一方で血糖値が極端に下がる(低血糖)原因としては、インスリン製剤の過剰投与、インスリノーマ、敗血症や肝不全、さらには過度な運動や若齢動物、そして長期間の絶食などが挙げられます。

これら高血糖および低血糖を引き起こす疾患のなかで、特に重要な疾患として糖尿病が挙げられます。

糖尿病治療時に使用するインスリン製剤を評価するうえで、重要な検査の一つに血糖値曲線の作成があります。使用するインスリン製剤にもよりますが、犬ならNPH製剤(ノボリンNなど)、猫ならインスリンデテミル(レベミル)を使用しますが(今は動物用のプロジンクもあります)、最低でも犬なら8時間、猫なら12時間、血糖値曲線を作ります(それぞれの使用するインスリン製剤の作用時間に合わせて設定します)。空腹時血糖値の測定から、食事を摂食させてからの1時間、そしてインスリン製剤を投与してからの1時間と3時間は、コンスタントに測定します。その後の測定間隔は、2~3時間を目安に測定します。このように血糖値の頻回測定は糖尿病症例における血糖値曲線を作成するうえで重要で、高血糖ピークおよびnadir(最低値)を把握することが、糖尿病症例に対するインスリン投与量の決定につながります。また、猫ではインスリン量決定のために、経口・静脈糖負荷試験が必要な場合があります。


No.304 糖尿病 (Diabetes)

糖尿病は、血糖値(血中のブドウ糖濃度)を下げるように調節するインスリンの分泌不足や作用不足により高血糖状態が持続し、多飲多尿・脱水・体重減少・白内障(犬)・サルコペニア(→No288サルコペニア)・後肢の虚弱・末期には糖尿病性ケトアシドーシスによる食欲不振・元気消失・衰弱や死亡を引き起こす病気です。犬も猫も中~高齢で多く発症します。

糖尿病で受診される方の主訴で一番多いのは「水をよく飲むようになり、痩せてきた」というものです。犬も猫も糖尿病になるとほぼ全例で多飲多尿が見られます。多飲多尿とは、これまでより多量に水を飲むようになり、尿量も増え、色が薄くなるような症状です。犬では肥満、クッシング症候群(→No.79 犬の副腎皮質機能亢進症)、未不妊雌の黄体期、膵炎(→No189膵炎)。猫では肥満、高脂血症、甲状腺機能亢進症(→No.78 猫の甲状腺機能亢進症)、尿路感染症、歯周病(→No97歯周病1→No98歯周病2)、末端巨大症、グルココルチコイド製剤などが糖尿病の基礎疾患になり得ることが明らかになってきています。

症状が多飲多尿だけの状態で見つかれば治療もスムーズに始められますが、そのまま放っておくとゴハンは沢山食べる割にどんどん体重が落ちていき、元気もなくなりグッタリするようになってしまいます。元気が無いような糖尿病の子に関しては通常入院での集中治療が必要となりますので、多飲多尿が気になったらなるべく早めに(元気なうちに)受診するようにしてください。

血液検査により血糖値の上昇を確認、尿検査で尿糖陽性を確認、基本的にはこれで糖尿病の診断はできる場合が多いです。あとは状態に応じて基礎疾患、合併症、現在の全身状態を把握するための検査を行って、重症度に応じて治療を組み立てていきます。

治療は食事療法と注射によるインスリン補充療法が主体となります。治療当初はインスリンの必要量を調べるのに数時間毎の血糖値測定が必要となりますので基本的には数日入院しての治療となります。ある程度のインスリン量が決まった時点で在宅でのインスリン注射を飼い主さんにしていただく形で通院治療に移行となります。

糖尿病は、ヒトではよく1型、2型といいますが、日本人の約95%は2型の糖尿病と言われています。2型糖尿病は 遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病します。インスリンの効果が出にくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりします。生活習慣の見直しを行うと改善したり、インスリン注射が必須ではありません。残りの5%の1型糖尿病は膵臓のβ細胞が壊れてしまい、まったくインスリンが分泌されなくなってしまいます。インスリンを体外から補給しないと生命に関わるため、インスリン注射を欠かせません。1型は子供や若い人に多く、2型は中高年に発症することが多い病気です。猫の8割は2型糖尿病と言われています。犬はどちらの型だか不明なことが多いようです。ほとんどは猫や日本人と同じように2型から発症したものと推測されるようですが、実際犬が具合が悪くなって病院に来る頃には病状が進んでいるため、1型と同じようにインスリン注射が治療には欠かせない場合が多いです。

糖尿病という病気は進行具合によって必要な入院日数や治療内容、救命率、当然ながら治療費に関してもかなりの差が出ます。多飲多尿は様々な病気のサインとしてとても重要な症状です、おかしいなと思ったらまずはご相談ください。


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