No.32 肥満(Obesity)

動物の肥満に対する認識も年々高まりつつあります。人の話を当てはめがちなのですが、違いもあります。

肥満の定義は『体脂肪が過剰に蓄積した状態』です。研究結果によりますが、日本の25~30%の犬猫が肥満だと見積もられています。肥満は加齢によって増加し、多くは5~7歳以上で肥満になる傾向があります。性別では雄より雌の方が太りやすく、去勢、不妊手術の影響もあります。犬種別では、ラブラドール・レトリーバー、ダックスフント、チワワ、プードル、コッカー・スパニエル、シェルティー、キャバリア、ビーグルなどで肥満が多く、ジャーマン・シェパード、ヨークシャー・テリア、グレーハウンド、ドーベルマン、ブル・テリアなどで少ないとされていますが、飼育環境が多大に影響するのは言うまでもありません。

原因は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることで、症候性肥満と原発性肥満とに分けられます。なんらかの疾患が背景にあり、その症状の1つとして肥満になるのが症候性肥満です。よくある原因として、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌・代謝性の疾患があります。胆嚢の働きが悪くなり脂質の排泄がうまく出来なくなると、肥満しやすい体質になります。また、ステロイド剤などの薬剤によって肥満になる場合もあります。原発性肥満はこれら以外のもの全てで、遺伝因子と環境因子の複雑な相互作用によって生じます。

エネルギー制限食が犬の寿命に及ぼす効果について、10年以上の年月をかけた実験があります。48頭のラブラドール・レトリーバーを2群に分け、一方は自由採食、一方はエネルギー制限群(25%減)として、ともに終生飼育したとき、平均寿命が自由採食群では11.2年(最長12.9年)、エネルギー制限群では13年(最長14年)だったそうです。この差をどう考えるかは人それぞれだとは思いますが、大型犬の約2年の寿命の差は、人に置き換えると10年くらいになります。いずれにしても、いつも、お腹いっぱい食べるというのは、よろしくない様ですね。

次回は肥満が原因で生じる主な疾患についてです。