No.52 食欲不振

食欲不振は様々な原因によって引き起こされます。重大な疾病であることもあります。一般的にはいろいろな病気の初期症状として現れます。食欲不振の症状のみで原因を特定することは困難な場合が多いのですが、まずは、最初のステップとして『病気が原因ではなく食べない状態』なのか『食欲がなくて食べられない状態』なのか『食欲はあっても食べられない状態』なのかを考えます。

『病気が原因ではなく食べない状態』というのは、普段から与える食事が多過ぎる場合や、選り好みの多い場合、急な食事の変更、運動不足、ストレス(ストレスは心の病気ですが)になるような環境の変化(新しい動物が来た、結婚などでヒトの家族が増えた、引越し、別離、離婚、死別)などが原因です。

『食欲がなくて食べられない状態』には、内臓系の疾患を含め多くの原因が存在します。まずは、急性なのか慢性的に食欲がないのかを判断し、他の症状(とくに体重減少、脱水、嘔吐、下痢、発熱、神経症状などは重要です)や、その動物の品種や病歴をよく吟味します。よくある原因としては、脳神経疾患、嗅覚の消失、痛み、各種臓器(心、肺、腎、肝、膵、脾、胃腸、血液)の疾患、感染・炎症、腫瘍、中毒、内分泌疾患、寄生虫などがあります(ほとんどの病気ですね)。

『食欲はあっても食べられない状態』という中で最もよく見られるのは、歯石が溜まり過ぎてひどい歯肉炎が起こり、口が痛くて食べられない場合です。この場合は悪臭と流涎が見られます。また、顎の骨折、咀嚼筋の異常や三叉神経麻痺などの口腔野の運動障害も原因となる場合があります(嚥下障害)。前庭障害などにより眼振が起こってしまった時もこの状態になります。

どの状態においても、必要に応じて、血液検査や尿検査や便検査、レントゲン検査や超音波検査、内視鏡などの検査を考慮します。これらを総合的に判断して原因を探します。治療法は原因、重症度によって変わりますが、どのような病気でも、早期に発見出来れば治癒率が高いことは言うまでもありません。