No.87 失神と痙攣

失神と痙攣は、似たような症状を示すこともあってよく混同されがちですが、全く違うものです。両者の特徴を考えてみましょう。

まず、失神ですが、簡単にいえば、短い時間(数十秒の間)、血圧が低下して心臓から脳に送る血液量が少なくなり、脳全体が酸素不足になって意識を失う発作です(ちなみに発作とは病気の症状が突発的に起こることをいいます)。

・瞬間的な意識消失

・姿勢維持筋緊張喪失(失禁・失便はまれ)

・発作後の意識はほぼ正常

・前兆がある

これらを特徴として、通常は数秒で終わります。主な原因は心臓性のもの(各種心疾患)のと神経性(興奮・ストレス)のものに大別されますが薬剤によって起こることもあります。

痙攣は、大脳皮質の1次的な神経細胞の異常と定義されます。

・強直性(不随意で急激な筋肉の収縮)→間代性(筋肉の収縮と弛緩が交互に反復する)

・自律神経症状:頻脈、血圧上昇、瞳孔散大、失禁、失便、流涎など

・意識消失(失神と同じ)

・前兆がないことが多い(発作との違い)

・発作後の異常あり(失神との違い):意識レベルの異常(数時間~数日)、盲目、ふらつき、落ち着きがない、過剰な食欲、攻撃的になる。

上記が特徴です。上から3つが痙攣の3大兆候です。犬の場合は症状が顔と前肢に顕著で、とくに流涎は大事な特徴です。また、夜間などの休息時に多く起こり、通常は2分以内に終わります。痙攣の原因は大脳です。

治療は原因を見定めて行うことになりますが、上述したように、まずは失神は心血管系、痙攣は大脳を精査することになります。

失神でも痙攣でも、通常はそんなに長く続くものではありません。起こってしまった場合は、頭をうたないようにするなど、動物の安全を確保して、基本的には触らないことです(その時に動画が撮影できれば、診断の大きな補助になります)。原因が特定されていない場合、症状が頻回な場合は早めにご連絡ください。